喧嘩の回数がグッと減る! パートナーがアスペルガー症候群かも?と思ったら気をつけたいポイント

暮らし

公開日:2018/11/28

『アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ 親密な関係を保ちながら生きていくためのガイドブック』(マクシーン・アストン:著、黒川由美:訳/スペクトラム出版社)

 自分の恋人やパートナーが発達障害であったり発達障害の兆候があったりすると、2人の日常生活の中でさまざまな問題にぶつかりやすくなる。中でも、コミュニケーションについての特異性がみられるアスペルガー症候群の場合は、どうやって心が通じ合うコミュニケーションをとっていけばよいのか悩んでしまうことも多いそうだ。

 そんな時に、大切な人との向き合い方についてヒントを与えてくれるのが『アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ 親密な関係を保ちながら生きていくためのガイドブック』(マクシーン・アストン:著、黒川由美:訳/スペクトラム出版社)だ。本書はアスペルガー症候群の特性を分かりやすく解説しており、良い関係を築いていくためのコミュニケーション改善法も具体的に教えてくれる。

 人と人とが心を通わせていくには、アイコンタクトやジェスチャーなどのように、言葉を使わない非言語コミュニケーションも不可欠である。しかし、アスペルガー症候群の方は非言語コミュニケーションが苦手で、冗談や例え話を「本音」と区別するのが困難であることが多いため、多くの誤解から関係が崩れてしまうこともある。こうした悲しい結末を防ぐには、アスペルガー症候群の方に響くコミュニケーションを取っていく必要があるのだ。

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■本音をきちんと言葉で伝えることが距離を縮める近道に

 大切な人に自分の気持ちを分かってほしくて、「私(僕)の立場になって考えてみて」とか「あなたが変われないなら別れてほしい」という言葉を投げかけたことがある人は多いのではないだろうか。しかし、アスペルガー症候群の方は言葉の裏にある意図を理解したり、他人の立場で物事を考えたりすることが苦手であるため、こうした言葉は溝を深めてしまう。

 アスペルガー症候群の方に誤解を与えないようにするには、真に意図することだけを伝え、口にする言葉は本音でなければならない。「正直な言葉」を使ってコミュニケーションをすることが、距離を縮める一番の近道になるのだ。

 そして、どうしても解決しなければならない問題が生じたときは相手を非難しないように気をつけながら、自分の気持ちをきちんと伝えていこう。

 例えば、不満を伝えるときは「あなた」ではなく「私」を主語にしてみてほしい。こうすれば、「あなたには本当にイライラさせられる」という不満も「あなたがさっき言ったことで私は傷ついてしまった。よかったら一緒に話し合いましょう」と言い換えることができる。こういった投げかけであれば、アスペルガー症候群の方も具体的に自分がどうすればよいのか分かりやすいので、トラブルが解決しやすくなる。

 コミュニケーションは大切な人との絆を強くするためには欠かせないものだが、そのコミュニケーションによる誤解から悲しみや苛立ちをつくってしまわないよう、正しいアプローチを覚えて想いを伝えていきたい。

■すべてを発達障害のせいにしないことも大事

 大切な人が発達障害である場合には歩み寄りが大切になってくるが、もしもパートナーの言動によって自分や子どもに危害があると感じたり、多大なストレスで深く傷ついたりした場合は、我慢をしないことも大切だ。パートナーであるあなたは一番身近な立場にいるからこそ、「許容できることと、できないこと」の境界線をしっかりと引くことが必要だ。

 アスペルガー症候群の方が身体的暴力を振るうのは非常にまれであるといわれている。だがもし、家庭内暴力や言葉による暴力を受けたときに我慢して平気そうに振る舞ってしまうと、そのことで間違ったメッセージを送ってしまう。「こんな言動をしてもいいんだ」と、アスペルガー症候群の方に思わせてしまう恐れがあるのだ。そのため、虐待的な行為は障害の有無に関わらず、見逃さないようにしていこう。

 なお、パートナーが発達障害の特性により突発的な怒りを起こす場合は、可能な限り、客観的に自分の気持ちを伝えて、交渉してみてほしい。こうした癇癪は短時間で治まるといわれており、アスペルガー症候群の方は怒りを爆発させた後も、いつもと同じ平穏な日を過ごしたいと考えているため、あなたの心が混乱してしまうこともあるかもしれない。

 そんなときは、相手を責めたり批判したりせず、突発的な怒りを自分がどう受け止めたのかを正直に伝え、その行動を止めてくれたら、きっともっと良くなれるということを具体的に話していこう。こうした解決策を提示していけば、今以上に良い関係を育んでいくこともでき、大切なパートナーを救うこともできる。

 ともに時間を過ごすパートナーが発達障害であると、どう振る舞えばよいか悩んでしまうことは多いかもしれない。だが、どんなコミュニケーションを取っていけばよいのかが分かれば、パートナーを支えることもでき、自分の心も楽になる。「アスペルガー症候群の恋人に話がうまく通じない…」と悩んでいる方はぜひ本書を参考に、笑顔が増えるコミュニケーション術を習得してみてほしい。

文=古川諭香