30歳すぎたら「モテる女」より「ダサくない女」!『アラサーちゃん』峰なゆかの“自意識”に絡め取られた話

エンタメ

2018/12/11

『オシャレな人って思われたい!』(峰なゆか/扶桑社)

「オシャレって思われたい、かつモテたい!」――誰もがもつワガママな欲望。しかし、いざ頑張って「オシャレな人」になろうとすると、出るわ出るわ、オシャレの矛盾点……。「インスタグラムに載せたコーディネートでフォロワーでもある友達に会いに行くのって恥ずかしい」「シンプルワンピにスニーカーが一番モテるってわかってるけど、地味なオバサンと紙一重だからついついゴテゴテな盛ったオシャレをして男性に引かれてしまう」「部屋の中でもカワイイ女子でいたいからジェラピケを部屋着にしたいけど、実際着るとトイレ行きづらいし寒いムリ」

 オシャレを頑張りたいのに、頑張る過程には滑稽さと切なさがにじむのはなぜなのか!? 『アラサーちゃん』の著者・峰なゆかがモード誌『Numéro TOKYO』にてキュートでオシャレなイラストとともに初のエッセイを連載。それを加筆修正してまとめたものが『オシャレな人って思われたい!』(扶桑社)だ。

 峰なゆかといえば元AV女優で、引退後に描きはじめた「アラサーちゃん」シリーズが累計60万部を突破した言わずとしれた売れっ子漫画家だ。インスタグラムやツイッターではオシャレな自撮りやモードなコーディネートが日々アップされている。当然、お部屋も相当オシャレで、ガラス張りのお風呂がど真ん中に設置されたデザイナーズマンションに暮らしているという。

 モードな部屋、モードな服、となると細部もオシャレに統一したい! ということで峰なゆかが地味に取り組んでいるオシャレ活動は「洗剤をオシャレなボトルに詰め替える」。

「私たちはスーパーで売られているダサい洗剤を我慢して使うか、海外のライフスタイルプロダクトブランドみたいなバカ高いオシャレ洗剤を頑張って買い続けるかの二択しかありません。私が選ぶのはもちろん三択目、『海外のライフスタイルプロダクトブランドみたいなとこのバカ高いオシャレ洗剤のボトルにスーパーの洗剤を詰め替える!』です」

 オシャレになるための行動が、なぜかみみっちくセコいという誰もが見て見ぬふりをしてきた矛盾を、峰なゆかがエッセイでさらりと披露する。確かに、スーパーで売っている激安の洗剤はフレッシュな果実のイラスト、ゴシック体の商品名、キラキラ光る謎のシールが貼られているというダサいパッケージ……せっかく調理器具をル・クルーゼで揃えてオシャレなキッチンを演出しても、シンクに置いた洗剤で一気に生活感が出てしまう。わざわざ引き出しに隠す? 高くても香水瓶のようにオシャレなボトルの洗剤を並べる? 現実と折り合いをつけると、峰なゆかのように「ちまちま詰め替える」以外に選択肢がないのである。オシャレな生活、オシャレな人への道のりはなんと険しいことだろう。

「オシャレしたいし、モテたいし、女ウケも欲しいし痩せたいし老けたくないしなるべく金はかけたくないし、痛いって思われたくない」――本書の正直すぎる冒頭は、全国の女性の心を代弁している。これに共感した人は、是非『オシャレな人って思われたい!』を手にとってほしい。これさえ読めば……オシャレな人になれるかはともかく、「悩んだり疑問に思ったりしているのは私だけじゃなかったんだ!」と安堵すること間違いなし。

 TwitterやInstagramに載せられる峰なゆかの自撮りはどれもオシャレでドレッシーだが、その裏では自意識との葛藤があった……その事情を知ってから彼女のSNSを見るのもまた本書の楽しみ方かもしれない。

文=坂本七海(清談社)