ギャル処女、ソープ嬢ガチ恋男子…こじらせ大人たちの性事情

マンガ

公開日:2019/1/9

『来世ではちゃんとします』(いつまちゃん/集英社)

「いつまちゃん」はTwitterで大人気の漫画家だ。多忙な会社員生活と並行して漫画を連載していたが、ついにこの度脱サラした。『来世ではちゃんとします』(いつまちゃん/集英社)は、そんな作者が送る「性」の4コマ。とある小さな映像プロダクションで働く登場人物たちがそれぞれ何かしらの「性のこじらせ」を持っているというストーリーだ。

 美人処女、性依存のおとなしめ女子、風俗嬢にガチ恋男子、処女厨セカンド童貞、メンヘラ培養沼男子。ときには真剣、ときにはズルく。それぞれが抱えている性のこじらせやモヤモヤが、読者の共感を呼んでいる。

 彼らが働く映像プロダクションは激務で薄給。忙しい合間を縫ってそれぞれの性の行きどころに悩んだり挑戦したりしている。

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 3DCGデザイナーの高杉梅(27)は美人なギャル風女子。サバサバした性格で、ときには友達の前で経験者ぶるけど実は処女。彼氏もできたことがない。好きなものはBL。忙しいときには会社に寝泊まりしながら、恋愛に湧き上がる情熱もなく、ひとりで生きていくことを考える日々。

 同期の大森桃江(27)はセフレが5人。おっとりしているが激しいプレイにも対応可、むしろその求められている感じが好き。スペックの高い男と寝まくり心を満たしている。セフレの一番お気に入りのAくん(商社勤務)には恋…。Aくんの本命になる子ってどんな子なんだろうと考えながら、自らを期待していなくもない。

 梅や桃江のほかに、登場する同僚男子が3人。ソープ嬢に恋してしまっている檜山トヲル(29)は、時間も金もない中がんばって月2回ソープ嬢「心ちゃん」のもとへ通っている。処女しか受け入れられないセカンド童貞の林勝(26)は昔の恋を引きずりながら迷走。親密になる女をメンヘラにしてしまう松田健(26)はクールな性格ながら女遊びが激しく、めんどくさくなった女は突き放す(でも時折見せる優しさに女が離れない)。

 社会で忙しく動き回る私たちは、クールなふりをしながらも、それぞれに人には言えない「性のこじらせ」を持っているかもしれない。それを気軽に語ったり相談できたりする人は多くないだろう。だが本作の登場人物たちは、読者にむけて全てを露わにしてくれる。彼女たちのエピソードに自分を重ねる人たちもいるだろう。「普段は言えないけど、本作を読んでこっそり共感できる…」「Twitterでなら読者同士で語れる…」本作は、そんな心の拠り所になり得る作品であろう。

 本書には「いつまちゃんのSNSお悩み相談コーナー」もあり、Twitterに寄せられたお悩みに作者が答えていく。もともと、毎日投稿していたTwitter漫画が人気となり、出版社の目に留まり漫画家デビューした作者。読者と近い距離で交流している作者の作品だからこそリアル感がある。共感して笑える『来世ではちゃんとします』。本作は、それぞれ性をこじらせた登場人物たちの「来世ではちゃんとします」という思いが込められている作品である。

文=ジョセート