ディズニーアニメが東京大空襲を招いた? 意味がわかると怖い危険なアメリカ映画

エンタメ

2019/1/19

『最も危険なアメリカ映画 “國民の創生” から “バック・トゥ・ザ・フューチャー” まで』(町山智浩/集英社インターナショナル)

「ディズニーが東京大空襲をけしかけた?」という衝撃的な文言。それは『最も危険なアメリカ映画 “國民の創生” から “バック・トゥ・ザ・フューチャー” まで』(町山智浩/集英社インターナショナル)という本の帯にある。

 本書は、映画評論家である著者が、数々のハリウッド映画に見られるアメリカ民主主義の歴史と背景を解き明かす一冊である。本書に登場する映画には、歴史が意図的に歪曲されていたり、特定の国や思想・主義を攻撃していたりと、政治的な主張が盛り込まれている。

■ディズニーは爆撃の必要性を訴えた?

 第二次世界大戦中、ハリウッドは敵国ドイツと日本への戦意を高める映画を作っていた。ドナルドダックやポパイ、バッグス・バニーらが、吊り目で眼鏡で出っ歯にフンドシの日本兵と戦っていた。1943年にディズニーが作った『総統の顔』(Der Fueeuhrer’s Face)というアニメでは、ドナルドダックが夢の中で日独伊指導者のために働き、汗びっしょりで目覚めて「なんだ、夢か」と安心する。

 ディズニーはまた同年に『空軍力による勝利(Victory Through Air Power)』というアニメを作った。これはしかし、国民に向けて戦意を煽るために作られたものではないし、政府からの依頼で作ったわけでもない。これはむしろ、ウォルト・ディズニーが進んで政府や軍に対して作ったものだ。長距離爆撃機による敵国本土への戦略爆撃の必要性を訴えるためだ。

 同映画の主人公は、第一次世界大戦にパイロットとして活躍した実在の人物。クライマックスでは、大量の爆弾が東京の軍事工場を襲っている。これに英国のチャーチル首相は感銘を受け、アメリカのルズヴェルト大統領との会談で話題にした。さらに英国軍は「ディズニー爆弾(Disney Bomb)」なるものを開発し、実戦に投入。その後、1945年に起こった東京大空襲にこの映画がどれほど関わっているかはわからないが、影響はゼロではないと著者は言う。

■『フォレスト・ガンプ』の違和感

 本書では他に、日本でも有名な『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ』などが紹介されている。『フォレスト・ガンプ』では、知能指数の低い主人公が歴史的人物と次々に出会い、歴史的事件の現場に居合わせる。これはアメリカがベトナム戦争に揺れた60〜70年代を描いている。主人公は南部アラバマ州に生まれ、50年代、60年代を過ごした。その頃、アラバマは人種隔離政策と公民権運動で大きく揺れていた。

 映画には実際の歴史的事件が次々起こるにも拘らず、大事件である63年のキング牧師のデモ行進はなく、キング牧師自体の登場さえなかった(DVDには収録)。黒人への凄まじい弾圧が存在しないアラバマを、「第二次大戦中の広島を舞台にしたドラマに原爆投下が出てこないようなものだ」と著者は言う。

 同映画ではまた、戦争反対を訴える若者を徹底的に堕落の象徴として描いたり、アラバマのテーマソングに英雄キング牧師への弾圧を支持する歌を用いたりなどした。

 映画はその国や当時の思想を色濃く反映するもので、歴史を知っていれば一層深く鑑賞できるだろう。単なるエンタメとしても良いが、映画だけに限らずこの世の「作品」には歴史的側面からの見方が欠かせない。または作品をきっかけに歴史を知っていくのもアリだろう。そのために、映画評論家の言葉が存在する。日本はいま受験シーズンまっ只中だ。受験生達には、身につけた歴史の知識をこれきりのものにせず、時勢を掴む武器としていってほしい。

文=ジョセート