夫から突然の離婚宣告。焼身自殺まで思いつめた主婦が、日常生活の崩壊をマンガで綴る

マンガ

更新日:2021/1/7

『不倫サレ日記。結婚9年目で33歳子なし兼業主婦が不倫されてみた』(ななしなあめ子/KADOKAWA)

「不倫は文化だ」などという迷言が飛び出したのはどれくらい前だったろうか。当時は今のようなバッシングの空気はまだ薄く、この言葉を発した某俳優のキャラクターもあいまって、呆れながらも苦笑とともにある程度受け入れられていたように思う。ところが、ここ数年で芸能人や政界などの不倫が立て続けに報じられるようになり、当事者たちは次々に“公開処刑”といわれるような厳しい局面に立たされるようになった。プライベートなやりとりを晒され、完膚なきまでに叩きのめされる。「浮気は男の甲斐性」なんて言っていた時代はもはや、はるか遠い昔である。

『不倫サレ日記。結婚9年目で33歳子なし兼業主婦が不倫されてみた』(ななしなあめ子/KADOKAWA)は、実際に著者が体験した内容をもとにしたコミックエッセイだ。夫の浮気発覚から、友人を巻き込んでの浮気の証拠集め、夫と浮気相手との話し合い、そして離婚に至るまでが、著者の心の葛藤とともに記録されている。愛らしいタッチの絵とは裏腹に、その内容は深刻で、身につまされるものだ。

■夫からの突然の離婚宣告、妻はストレスによる体調不良…

「離婚しよう」――夫からの言葉は突然だった。しかし、振り返ってみれば、飲み会の回数が増えていたり、夫が家の中でも四六時中スマホを手放さなかったり、と怪しい点はいくつも思い当たった。夫の入浴中や寝入った後に行った家捜しでは、スマホに不倫相手とのラインのやりとり、夫のカバンの中からはコンドームや大人のオモチャなど、著者との生活では使わないものばかりが見つかった。

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 かつて同じ境遇を経験したという友人の協力を得て、夫の不倫の証拠集めに奔走するも、自身は吐く、眠れない、食べられない、髪が抜ける、そして終いには不正出血で倒れて点滴…そんなつらい状況の妻の様子を見ても、夫は離婚の意思を変えず心配するそぶりすらみせなかった。

■不倫や離婚はよくあること…では済まされない厳しい現実

 著者はこう語る。

私の経験した不倫劇は世間ではありふれたことで
でもサレた側ってすっごく大変なのによくあることで済まされがち
こんなこと よくあっちゃいけないと思う
私のような思いをする人がひとりでも減ったらいいなって思う

 配偶者の不倫が発覚した後、自分はどうしたいのか。これまで通り関係を続けたいのか、そうではないのか、また相手にこの先何を求めるのか、何も求めないのか…それによって、その先の対応は変わる。

 自分はどうしたい? 著者は迷い、悩む。一時はこの著作を書き上げたら、夫の実家の前で焼身自殺しようとまで思いつめていた。それでも著者は、本書の末尾に元夫へのメッセージを刻み、自分が幸せになるために前進することを決意した。そう前向きに言えるようになるまでには、相当の葛藤があったことだろう。

「遺書として」――それが、本作を描き始めた目的だったが、それが「幸せになるために」と変わった。そしてこれは著者自身が今後も抱える人生の課題だという。

 愛ってなんだろう、結婚は本当に愛の形のひとつなんだろうか…本書を読むとそんなことを改めて考えさせられてしまう。

文=銀 璃子