JKビジネスで働く少女たちの実態――騙されているのは少女か大人か?

社会

2019/1/28

『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(高木瑞穂/大洋図書)

 日本では売春防止法によって売春そのものは禁止されているが、売る側にも買う側にも罰則規定は無い。ただし売る側が未成年の場合、買った側は児童買春・児童ポルノ禁止法違反となり処罰される。未成年者は保護するべき対象という考えによるもので、国連児童人身売買・売春問題担当特別報告者が「性的搾取につながる」として、商業活動をただちに禁止するようにと日本に勧告したJKビジネスは、しかし本人が騙されて売春をしているとは限らないという見方もある。『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(高木瑞穂/大洋図書)はノンフィクションライターの著者が、まさにウリをしている少女たちに直接取材して、その実態に迫っている。

 ところが本書のプロローグを読み始めてみたら、うっかり買う本を間違えたのかと思った。高校を中退した16歳の少女を相手に買春している会社経営者の男性が、その少女を救うために力を貸してほしいと著者に懇願してきたそうだ。男性が語るには、少女は親の虐待から逃れるために家出をし、現在は悪い男に軟禁されて売春をしており、警察に駆け込もうにも所轄に内通者がいるため「マスコミの力が必要なのです」という。なにやら、サスペンス小説が始まるかのような導入である。

 そうして始まる本編には、堂々とJKビジネス店で働けるオーバー(18歳以上)の女性のみならず本書の主役となるアンダーの少女たちが登場するのだが、著者によればアンダーの取材はアポが取れたとしても、実際に来てくれるとは限らないという。匿名にならざるを得ないためウリたい彼女たちにとって宣伝にならないばかりか、身バレのリスクが付き纏うからだ。それでも取材に応じた一人の17歳のアコ(仮名)が、取材の仲介をしてもらった男性との会話で「売春して自信が持てた」と答えているのを小耳に挟み、著者は驚いたと述べている。月並みな言葉で云えば、承認欲求ということだろうか。

 男性アイドルグループに貢いでいるという同じく17歳のミワは、友人から「縁切るからね!」と怒られて一度はヤメたものの、また始めてしまう。もちろんお金が無くなってきたからというのが一番の理由だろうが、「何も分かってないクセに」と反発する気持ちもあったらしい。確かに、彼女の「経験者に怒られたんなら受け入れるかもだけど」といった気持ちは分からなくもない。そしてそんな彼女たちの心に入り込む女性のスカウトマンの存在がJKビジネスを増殖させたらしく、その暗躍ぶりがまた物語めいている。

 アンダー店は屋号を数ヶ月ごとに変えるなどして警察の摘発から逃れようとしているわけだから、闇営業店や悪徳業者と少女たちが顔なじみであるはずもない。そこで接点となるのが女性のスカウトマンで、SNSを通じて少女たちの相談に乗ったりして親しくなり、知り合いの店に紹介すると今度は少女から店の情報が入るようになって、もっと稼げそうな店への移籍や摘発された店に所属している少女の引き抜きに活用する。いわば少女たちがスパイのような役割を持ち、16歳の少女が自分の所属している店を警察にタレ込んで摘発されたケースでは、実は店を摘発させることで所属している女性たちをデリヘルに移籍させ、少女自身がスカウトバックを得ていたなどということもあったというから、さながらスパイ小説だ。

 本書において著者は、少女売春をする彼女たちの心理を「依存症というよりもむしろ、麻疹(はしか)のような感染症に近いものだ」と述べている。「熱が冷めるまで誰の意見を聞くこともない」彼女たちが時を経て大人になっても、また新しい少女たちが患うというサイクルを断ち切るのは容易ではない。それこそ本書のエピローグは、まるでラストシーンで次の厄災を予兆させるホラー小説を思わせる。ただし、フィクションのようでいて現実である。

文=清水銀嶺