がん、肥満、うつ病…「慢性炎症」が現代人を悩ませる病気の大半にかかわる万病のもとだった!?

健康・美容

2019/1/30

『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か(ブルーバックス)』(宮坂昌之、定岡恵/講談社)

「慢性炎症」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 文字通り、慢性的に炎症が持続している状態を指し、漠然とはしているがイメージは湧く。実はこの「慢性炎症」は、まだ広くは知られていないが、様々な疾患に関与することが分かってきて、世界中の科学者が注目する研究対象となっているのだ。

『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か(ブルーバックス)』(宮坂昌之、定岡恵/講談社)によれば、「慢性炎症」自体は症状が軽いため見つかりにくいが、進行すると、がんや糖尿病、アルツハイマー病などの病気の原因となり、その病気を悪化させてしまう。自覚症状がないまま炎症が進行し、気づいた時には臓器の機能不全などが始まるため、欧米では「サイレント・キラー」「シークレット・キラー」とも呼ばれている。

■現代人を悩ませる病気の大半のもと!? 慢性炎症が引き起こす病気って?

 慢性炎症の状態が引き起こす病気は様々だが、例えば「がん」もそのひとつ。いまや日本人の2人に1人が罹患すると言われている。ピロリ菌や肝炎ウィルスによる持続的な感染が、がんの発生に大きな影響を与えると考えられているが、感染が長引く過程で慢性の炎症が見られる。

 さらに、「肥満」や「糖尿病」などの生活習慣病にも、慢性炎症が大きく関与している。過去に行われた実験から、高カロリー食を摂取して、わずか5日目には、脂肪組織に炎症状態が見られ、炎症反応が促進されるメカニズムが機能していることが分かっている。

 つまり、暴飲暴食を続けると、この炎症が悪化していくということだ。記憶に新しいのは年末年始の生活…。長い休みなのをいいことに、そして、「年に一度だし」「新年だし」と理由をつけて、かなり暴飲暴食をしてしまった。これからは、「体のどこかで生じている炎症」をイメージして、節制を心がけたい。

 驚くべきことに、「うつ病」も炎症と関わりがある。他の病気ほど明確ではないものの、うつ病に関するマウスの実験から、脳内炎症による神経細胞の機能変化が重要であることが示唆されている。少しでも可能性があるなら、気をつけたいところだ。

■慢性炎症を予防するにはどうすればいいのか?

 万病のもととなる慢性炎症。著者は、予防のために大切なのは「健康習慣」であると指摘する。何事もほどほどに、やりすぎないよう心がけることが大切だ。「脂肪分のとりすぎ」「アルコールの飲みすぎ」など、「ほどほど」を過ぎると、血管の壁や臓器など、悪いものがたまる場所で炎症が始まり、体調を崩してしまう。

 疲れていると高カロリーな食事に偏ったり、お酒の量が増えたりするが、それが続くと、体が重く、だるくて調子が出ないと感じることがある。これは、炎症による不調なのかもしれない。

 他には、自分の家族や家系にどのような病気があったかを知ることも重要。体には個人差があり、炎症の起こりやすさ、続きやすさなども、人によって異なるためだ。個人差には、環境によるものと遺伝によるものがあり、環境は自身の努力で改善できる。一方で、遺伝は家系に伝わるものなので、どんな病気があったのかを知っていれば、対処できることもある。

 どの慢性炎症にも効く特効薬はないものの、それぞれの疾患に対しては、効果的な治療が可能になっている。しかし、一番大切なのは慢性炎症の予防。そのためには、何事も「ほどほど」の健康的な生活を心がけ、ストレスをためないようにすることが重要だ。体調が優れないということは、体のどこかに炎症があるかもしれないということ。最初は小さな炎症でも、知らないうちに悪化してしまうため、早めの対処が必要だ。

 何事もほどほどの生活は、簡単なことではないが、いまも体のどこかで発生しているかもしれない炎症を悪化させないためにも、食事や睡眠、ストレスへの対処など、できるところから見直してみてはいかがだろうか。人生100年時代を生き抜くためにも、様々な病気を引き起こす慢性炎症の予防が鍵となりそうだ。

文=松澤友子