縁故採用が会社を救う!? 知らない人の採用に苦戦するくらいならコネを使うべき理由

ビジネス

公開日:2019/2/6

『知らない人を採ってはいけない』(白潟敏朗/KADOKAWA)

 今やどこの業界も人材不足。求人広告を出しても求職者が集まらず、無理に採用しても部署と人材がマッチしなければ離職され、また高いコストをかけて求人を出し…。かつては考えられなかった人手不足による倒産事例も徐々に増え始め、頭を抱える企業が多い。

 そこで悩める人事担当者にご提案したいのが、「リファラル採用」だ。人材獲得の“新しい世界基準”となるこの採用活動は、サイバーエージェントやメルカリをはじめとする有名企業で導入に成功し、高い成果を挙げている。

 リファラル採用を行うと有能な人材を獲得できる可能性が高まるばかりか、社長と社員に一体感が生まれ、業績が上向く効果も期待できる。これはただの採用活動ではない。

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 リファラル採用を解説する数少ない教科書『知らない人を採ってはいけない』(白潟敏朗/KADOKAWA)より、企業と労働者に好影響を与える新しい考え方について少しだけご紹介したい。

■年間数百万円もかかる採用活動の費用を大幅に削減できる!

 そもそもリファラル採用とは「社内外の信頼できる人脈を介した、紹介・推薦による採用活動」のこと。アメリカの大企業の8割以上が導入していて、世界中の企業で採用の柱になりつつある。

「要は昔からある縁故採用のこと?」と思われる方がいるだろう。これに関しては、半分正解半分間違いだ。社員が友人や知人に声をかけるはじめの“接点”の部分は縁故採用と同じ。しかし、リファラル採用は縁故採用と違い、誰でも無条件に採用するわけではない。

 この採用活動を行うと以下の7つのメリットが得られる。

(1)採用コストを大幅に削減できる
(2)社長と会社に合う人材を採用できる
(3)入社後の社員の定着率が向上する
(4)会社の魅力と課題を見える化できる
(5)会社の魅力の継続的向上(経営改革の実現)
(6)幹部と社員が経営者目線をもつ(究極の人材育成)
(7)みんなの心が1つになる

 みなさんは企業が求人にかける費用がどのくらいかご存じだろうか? マイナビ「中途採用状況調査2018年版(2017年)」によると中途採用にかかる総額は、「人材紹介」が466.6万円、「求人広告」が294.2万円、とべらぼうに高い。これだけお金をかけてすぐに離職されたら、採用活動だけで経営を圧迫してしまう。特に中小企業には死活問題だ。

 一方、リファラル採用は社員の友人や知人の紹介による採用なので費用が非常に安く済む。声をかける人材候補への会食費が3万円~15万円程度、そのほか社員に報奨金を支給するとしても、上記のようなコストがかからず劇的に費用を削減できる。

 さらにもう1つの大きな利点は、採用活動によって経営に変革をもたらし、会社で働く全員の意識が変わるところにある。

■社長が「耳の痛い提案」を聞くことで業績がアップし人材が育つ!

 リファラル採用を導入する前提条件として、友人・知人に声をかける社員が「自分の会社が好き」である必要がある。人は誰でも、嫌いなものを友人にすすめたりしない。

 だから、リファラル採用を行うためには、自社にどんな魅力があってどんな課題があるのか、今後どのような企業になっていくのか「見える化」を行う必要がある。リファラル採用を行う社長や社員たちが自社を分析し、魅力と課題を徹底的に洗い出すのだ。このとき自社の魅力だけでなく、「パワハラを行う上司が2名いる」「会社の業績が鈍化している」など、さまざまな課題が見えてくる。自分のことだと看過してしまうような課題でも、友人にすすめるとなると見逃せなくなるものだ。

 もし社長が課題を無視し、社員に嘘をつかせて無理やり採用させると、入社した・させた両名がそろって退職するリスクを背負うだろう。それどころか、反発する社員たちが派閥を作って会社が分裂するしっぺ返しに遭いかねない。

 そこで社長は社員から挙がった「耳の痛い提案」を真摯に受け止め、改善策を打つことになる。リファラル採用のために自社の魅力・課題を洗い出し、課題に着手することで社長と社員の間に一体感が生まれ、徐々に社員が会社を好きになり、仕事に精を出すという好影響をもたらすのだ。

 さらに企業理念・行動指針、欲しい人材の設定、経営計画の設定、賃金制度・能力開発制度などを社長と社員で話し合うので、社員が社長と同じ経営目線に立つことになる。これは幹部研修や経営力アップ研修とは比べ物にならないほど人材育成の効果を発揮する。

 リファラル採用は、経営改善・人材育成活動にもつながる最高の採用活動なのだ。

 では、具体的にどのように採用活動を進めればよいのか。このとき陥りがちなのが、社長が人事担当者や仲の良い社員に丸投げしてしまうこと。これでは会社全体の改善にはならず、失敗してしまう。

 またどんな良いものにもデメリットがあるように、リファラル採用にもデメリットが潜む。たとえば短期間の大量採用は不向きだ。リファラル採用の効果を最大限発揮するためにも、この採用活動についてもっと知りたい方はぜひ本書を手に取ってほしい。

 絶望的な少子高齢化によって今後日本は急速に人材難に見舞われる。そんな状況が始まりつつある現在でも、パワハラや低賃金などのブラック企業に苦しむビジネスマンが数多い。

 もっと良い人材が入社して、社員全員が会社を好きになり意欲的に働く好影響を生むためにも、人手不足に悩む経営者はこのリファラル採用を“採用”してほしい。良い業績を生む会社の前提条件は、やはり社員みんなが元気なことだ。

文=いのうえゆきひろ