「してくれない夫」と“レス婚”。その果てに選んだ生き方とは?

マンガ

公開日:2019/2/9

『レス婚「してくれない夫」と結婚してしまいました』(武蔵野みどり/秋田書店)

 インターネット上で検索ボックスに「セックスレス」と打ち込めば、「セックスレス 辛い」というサジェストが出てくるほどに、多くの人が悩む夫婦の問題。おおっぴらに相談できることではないからこそ、ひとりで見られるネットの世界に答えを探す人が多いのだろう。

 ひとりでアクセスできる情報源という意味では、書籍もネットと同じだ。セックスレスがテーマの作品は、『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)、『実は私セックスレスで悩んでました』(とがめ/KADOKAWA)、『今日も拒まれてます セックスレス・ハラスメント嫁日記』(ポレポレ美/ぶんか社)など多く刊行されていて、しかもよく売れているという。

 どの作品でも、夫婦のあいだのコミュニケーション=セックスが欠けてしまったことで苦しむ人物が描かれているが、『レス婚「してくれない夫」と結婚してしまいました』(秋田書店)の著者・武蔵野みどりさんも、そんな状況に悩む人のひとりだった。

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 本作は、10年ほど前にみどりさんが経験したことを描いたコミックエッセイだ。

 30代のころ、婚活に疲れ果てたみどりさんのもとに舞い込んだのは、未来の夫からのメールだった。やりとりを重ね、何度かデートをするうちに、みどりさんは「生活を営んでいけるパートナーを探してるんです」と言う彼に好感を持つようになる。

 彼のことを、不器用ながらも一生懸命な人だと感じたみどりさん。ちょっとピントがずれ気味ではあるものの、みどりさんに対する本気と気遣いを見せてくれる彼とは、同棲生活もうまくいった。ただ問題があったのは、“性の不一致”だ。

 彼のあっさりHに合わせると、みどりさんにとって楽しいH――相手を喜ばせ合うセックスはできない。相談したくても言い出せず、みどりさんの内側にはモヤモヤが溜まっていく一方だった。そんなフラストレーションを抱えながら毎日を過ごすうち、ふたりはついに小さなきっかけからすれ違い、セックスレス状態に突入してしまう。

 Hがなくても、ふたりは趣味も外食もともに楽しむ仲よしカップル。「Hなことって私たちには必要ないのかな?」、みどりさんがそう思うようになったころ、ふたりはそのまま結婚することになった。夫婦になっても、もちろんレス状態は続いている。このままではどうにもならない。みどりさんは勇気を出して、「ウチらHしてないよね」と、夫の前で口火を切るのだが……?

「物理的にも精神的にも接触してない」。セックスレスの問題は、みどりさんのこの言葉に尽きる。性欲を処理できれば満足するというわけではない。いちばん身近なところにいて、自分のことを理解してほしいと思う立場の人と、肉体ばかりか、気持ちを触れ合わせることもできない――それこそが、これほどまでに多くの人を悩ませ、孤独に陥れるレス問題の正体なのだ。

「にほんブログ村」ランキング1位のセックスレスブログを、手に取りやすいキュートなデザインで書籍化した本作。“レス婚”の果てに著者が選んだ生き方を知ることで、少しでも苦しみが軽くなる人がいるようにと願う。

文=三田ゆき