「会社やめようかな…」はあなたのチャンス! 10年後に後悔しない生き方を選ぶには?

ビジネス

公開日:2019/2/20

『10年後、後悔しないための自分の道の選び方』(ボブ・トビン:著、矢島麻里子:訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「今勉強しておけば、将来いい仕事に就けるわよ」――。筆者は、母親から何度聞いたかわからないその言葉を頼りに、小学4年生から受験勉強を始め、いわゆる「いい大学→いい会社→いい人生」の“エスカレーター”に乗ってきた(つもりだ)。

 だが、優秀なはずの大学の同期たちを見ていると、「いい会社→いい人生」が幻想であることをまざまざと見せつけられる。「いい会社」がもたらすのは、あくまで「お金に困らない人生」であって、「幸せな人生」とは限らない。名のある企業に入社が決まってホッとしていた彼らは、1年経つともう転職を考え始めている。自分は、今の会社にいて本当にいいのだろうか――。

 本書『10年後、後悔しないための自分の道の選び方』(ボブ・トビン:著、矢島麻里子:訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、こうした疑問を持つことを“自分の望みを掘り下げるチャンス”だと語る。20~30代の社会人は、数年働いたことで、新卒の就職活動時には気づかなかったことが実社会を通じて見えている。

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■仕事を通じて求めているのは、金? 名声? それとも――

 自分は、仕事に何を求めているのか。とにかくお金が欲しいのか。それとも、そこそこの給料で趣味や大切な人と過ごす時間が欲しいのか。仕事を通じて自己実現したいのか…。私たちは、さまざまな経験を積み、試行錯誤を重ねながら“理想の働き方”を追い求めていくべきだ。本書は、決断、自信、学び、幸福などの切り口から、自分のキャリアを“つくる”ための考え方を解説する。

 本書で著者が強調しているのは、“幸せでいることを最優先する”ことだ。著者は、かつてカリフォルニアの大学で教鞭をとり、物質的に恵まれた生活をしていたそうだ。だが、それでもどこかで幸せを感じることができずにいたという。そんな著者は、現在日本でパートナーとともに幸せな生活を送っている。何が彼を変えたのか。その最も大きな要因は、意識的に“幸せでいることを最優先する”と決断したことだという。大学をクビになった著者は、日本でパートナーと出会い、アメリカの仕事を辞めて日本で暮らすことを決意した。そして、“幸せ”になるために日本で学び、社会貢献し、働き、生活を楽しんできたのだ。

 本書に登場する、外資系企業の消費財マーケティング部門で11年間働いていたカナコさん(仮名)も、現在は幸せを最優先に生きている。人事部門が社員を厳しく評価することに耐えられなかったという彼女は、写真講座を受講してスキルを身に着け、マーケティングの仕事で培った人脈を活用して、イベントや製品広告のカメラマンになった。カナコさんは、その転身について「収入半分、幸せ10倍。だから大きな前進です」と表現している。なんと素敵な言葉だろう。

 著者は、自分が望む方向に進むためならば、「エスカレーターを降りてもいい」と語る。自分のキャリアを積み上げることに必死だった私にとって、この言葉にはずいぶんと救われた思いがした。本当に大切なのは、自分自身の価値基準で“幸せ”を実感できることである。本書で語られる決断や自信、学びについての各論は、すべてそのためのものだ。

文=中川 凌