「自己PRは1行に絞れ!」…でも得意分野がない人は何をアピールすればいい?

ビジネス

更新日:2019/3/1

『今すぐ自分を売り出す1行を作れ』(さわらぎ寛子/大和書房)

「どんな仕事をしてるんですか?」という質問をされて、日々のあれこれを思い浮かべながら「えーっと…」とたじろいでしまったことはないだろうか。『今すぐ自分を売り出す1行を作れ』(さわらぎ寛子/大和書房)は、著者がコピーライターとして見聞きしたさまざまな事例をまじえながら、「簡潔に物事を表現すること」の重要さ、大変さ、楽しさを教えてくれる1冊だ。

 本書は、自分で自分を売り込まなければいけないフリーランスだけではなく、会社員から就活生まで、自分をより豊かに表現したいあらゆる人に向けて書かれた1冊だ。

 就職や転職活動の時に「自己PR」に悩んだことがある人は多いはずだ。この言葉は、ともすると「自分(志望者)」のことだけを聞かれているように感じてしまう。本書では「自分が相手にとってどう役立つ(可能性がある)のか」という視点の重要さが繰り返し示される。

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人は、「同業他社と違う」から、その商品が欲しくなるわけではないのです。「自分に役立つ」「これを使えば、自分にとっていいことがある」と思うから。そして、それを使ったりやったり、その人と会ったりした後の「自分の変化」が想像できるから、それが欲しくなるのです。

・ターゲットを想定し、彼らのベネフィット(得られる未来)を考える
・「何をしたいか」というコンセプトを固める
・理由・方法・結果・シーン(例示)・セリフ(ターゲットの心の声)の5点を書き出す

 最終的な「1行」を作るために、こうした思索を具体的にどうやって行えばいいかが本書では説明されている。ワークシートも巻末に付属しているので、読者は書中の指示に従いながら頭の中を根掘り葉掘り探れるようになっている。

 数あるポイントの中で特筆したいのは「まだ実現していないこと」「まだ分からないこと」を自分のセールスポイントにしてもよいという点だ。自己PRや志望動機というと、どうしても自分の中に「あるもの」から掘り出すようなイメージになってしまいがちだ。著者は、コピーライティングの相談を受ける中で、相談者が「自分の言いたいこと」、つまり「既にあるもの」を軸に話す傾向があることに気づいたという。

今できることを書くのではなく「こうなりたい」という宣言で構いません。「自分を表す1行」は、相手に自分を知ってもらうという意味もありますが、もう一つは、「自分が進んでいく指針になる」という大きな意味もあるのです。

 すでに手に職があり、「持っているもの」で生活しているように見える人も世の中にはいる。しかし、そうした人もまた、「まだない」けれど自分の心の中にあるビジョンをうまく共有し、他者を惹きつけているからこそ「手に職がある」ように見えるのだ。

「自分の言葉で、生きていく」。これは、著者が本書を書くにあたって作った1行だ。そのプロセスは、SNS・ホームページ・チラシ・名刺・ブログなど、あらゆる場面で役立つことだろうと、本書を読むと実感できる。ぜひ、本書をきっかけに「たくさんの、魅力ある1行」を生み出してほしい。

文=神保慶政