“カツラ”は経費で落とせるか? 確定申告で気をつけたい領収証のハナシ

ビジネス

公開日:2019/3/4

『経費で落ちる領収書大全』(石渡晃子/ナツメ社)

 フリーランス1年目の筆者は、年度末の“アレ”に怯えている。そう、確定申告だ。そこで仕事に使ったお金を経費として申請し、払い過ぎた税金を取り戻さねばならない――。諸先輩方からそう聞き及んではいるのだが、何が必要経費で落ちて、何が落とせないのかが、今一つわからない。とりあえず、細かい取捨選択は未来の自分に任せ、思考停止であらゆるレシートを保存している(結果、財布の形が変わりはじめている)。そんな折、編集者から送られてきたのが本書『経費で落ちる領収書大全』(石渡晃子/ナツメ社)だ。「そうです、こういう本を求めていたんです(ありがとうございます)」。早速、舐めるように本文を読んだ。

■そもそも、なぜ“経費”にこだわるのか?

 フリーランスになって間もないという人や、これからフリーになるかもしれないと考えている人は、そもそも“経費”の意味やその重要性にピンときていないかもしれない。その影響をいちばん受けるのは、所得税の支払額だ。フリーランスの場合、課税対象となる所得金額は、「事業所得=収入-経費-各種所得控除額」のことである。そのため、“経費”をきちんと申請すれば、課税対象となる所得金額が減るため、最終的に納めなければならない所得税の金額も減る、というわけである。

 ついでに、課税所得の10%にかかる住民税も減らすことができる。では、経費は、増やせば増やすほどオトクなのだろうか。残念ながら、何でもかんでも経費にできるわけではない。そこで、「コレって経費にできるの…?」という疑問が生まれるのだ。

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■コレって経費で落ちますか? そんな疑問を徹底解説!

 さて、それでは具体的に本書の事例から「落ちる」「落ちない」のモデルを見てみよう。

【自宅兼事務所の家賃は経費になる?】
答え:「事業で使っている床面積分」は落とせる。

 自宅で仕事をしているというフリーランスなら、まず誰でも気になるのがこの点だろう。自宅兼事務所の場合は、誰が客観的に見ても明確な基準で「仕事で○%、プライベートで○%」と区分(これを按分という)し、その分の家賃を経費に算入することができる。

【お昼の飲食費は経費になる?】
答え:取引先や従業員で摂る場合はOK。友人や家族も場合によってはOK。

 取引先や従業員とのランチは、「会議目的」であればOKだ。領収書やレシートをもらい、「誰と(何人で)、何について話し合ったのか?」を記録しておくとよい。相手が友人や家族であっても、仕事との関連性がきちんと説明できれば問題ない。注意が必要なのは、“ひとり”の場合。「ひとりメシ」は、誰もがプライベートでもすることなので経費としては認められない。それに対して、「ひとりでお茶」は、仕事のための“場所代”という解釈ができるため、経費に算入できるそうだ。

 経費算入の基準は、職種によっても変わる。たとえば、芸能人やモデルといった職業であれば、“カツラ”も経費の対象になるだろう。著者によれば、業務との関連具合にもよるものの、50%を消耗品費として経費にするのが妥当だという。

 どんな場合でも、可否を分けるポイントは「事業で収入を得るために、必要な支出かどうか?」だ。本書は、70の実例とよくあるFAQをまとめているから、これ1冊で経費の悩みは解決するはず。筆者も一安心である。

文=中川凌