感染者は全身が“性器”になってしまう!?性欲の恐ろしさを描くマンガ『リビドーズ』

マンガ

公開日:2019/3/28

『リビドーズ』(笠原真樹/集英社)

 人間の三大欲求といわれている「食欲・睡眠欲・性欲」。ただ、みんな普段はその三大欲求全開のまま暮らしているわけではない。「理性」が欲求を調整してコントロールしながら暮らしている。だけど、欲求側が人間を乗っ取ったら……? 全人類の欲求が無制限に解放されたら世界はどうなるのか。

『リビドーズ』(笠原真樹/集英社)は、謎のウィルスに感染した人間の性欲が、解放されて暴走する世界が描かれている。そのウィルスは性欲に反応し、感染した者は全身が膨張して性器のようになって欲望を果たすまで止まらない。

 主人公、脇谷イサムは高校生2年生。所属している陸上部ではチームメイトからモブ(群衆)扱いされている。家の経済状態を鑑みて駅伝で大学の推薦獲得を狙うも、その夢は怪我をしたことで潰えてしまった。そんな冴えない日々。思春期の男子の常として、いつもエロい妄想で頭はいっぱいだし自慰もする。が、他の子と違うのは、イサムはそんな自分の性欲に対して強い嫌悪感があること。彼は幼馴染のタカにそんな自分の気持ちを打ち明ける。

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「…あのクソ犯人と同じもんがついていると思うと たまに嫌気がさす」
「怪物がいるんだ おれの中に」

 そんなある日、バイトしていたコンビニで事件が起きてイサムはウィルスに感染してしまう。

 死を覚悟した彼は好きな女の子に告白をするのだが、その場に別の感染者が登場して彼女に襲いかかる。イサムは彼女を守ろうとしてその感染者と身体が触れたことにより、発症。しかも、なぜか右腕だけ……。

「性欲」がトリガーになるこのウィルスは、隠していた性欲を容赦なく暴く。例えば、Tシャツの隙間からちらっと見えた胸の谷間、背中に感じた好きな子の身体の重み。性欲を感じた瞬間、全身が欲望に満たされる感覚は誰にでも身に覚えがあるだろう。そして性欲に身を委ねたこともあるだろう。自慰だろうとセックスだろうと。本作ではそんな感覚を「人間を支配するモンスター」として公衆の面前に暴く。だからこそ全身が性器となって膨張し歯止めが利かなくなる描写は、よく知る性欲の正体を見るようで恐ろしさを感じる。

 なぜこんなウィルスが生まれたのか。このウィルスに治す方法はあるのか。そして発症した性欲を人間はコントロールすることはできるのか。謎は多く尽きない。扉を開けたばかりのこの物語が今後どう展開するのか、同じ欲望をもつ人間として注目したい。

文=中原由梨