Twitterフォロワー約9万人! “生きることに向いてない”主婦に共感が止まらない

文芸・カルチャー

2019/4/23

『アラフォーになってようやく気づいたんだけど、私、たぶん向いてない。生きることに…… メンタル編』(甘木サカヱ/KADOKAWA)

 甘木サカヱ氏は「よく眠りたまに色々考える主婦」の名でフォロワー数8万9000人を超える大人気ツイッタラー。2児をもつワーキングマザーで、義父母と同居している。うつ病持ちで、本人いわく、体力と気力と家事能力のないデブな主婦。

 そんな甘木氏のよりぬきツイートにエッセイを添えた短編集が『アラフォーになってようやく気づいたんだけど、私、たぶん向いてない。生きることに…… メンタル編』(甘木サカヱ/KADOKAWA)だ。

 彼女は冒頭で自分自身をこう紹介している。

「この本のタイトルにあるとおり、キラキラ輝く毎日とはほど遠い、つくづく“生きることに向いてない”アラフォーの、さえない一般女性です」

 そんな彼女がなぜツイッターでこんなに人気なのだろうか? それは、彼女がありのままに語る「生きづらさ」に、多くのフォロワーが共感しているからだろう。人生経験を積み上げてきたアラフォー女性たちも、日々子育てに追われる主婦たちも、きっと毎日綺麗ごとばかりでは過ごせない。甘木氏は、彼女たちがどこかで感じている「生きづらさ」を代弁してくれる存在なのであろう。

 では本書から、甘木氏のつぶやきを少し覗いてみよう。

・暮らすというのは激流のなかに立ち続けるようなもので、ただ現状を維持するために多大な努力を要するものだと私は実感していなかった。たまに掃除して料理して家事ができる気になってたけど、それは岸辺で水遊びしてるようなもんで、積もり続ける洗濯物、埃、ゴミ、空腹の激流にあっさりと流された。

・子どもを産む前の「私はこんなすばらしい母親になる! 絶対に虐待なんてしないし子どもの気持ちを尊重して怒鳴ったりせずにちゃんと話を聞くの!」みたいな決意は、子どもが捨て犬を拾ったときの「クリスマスも誕生日プレゼントもいらない、毎日散歩させて餌もあげて学校の勉強もするから!」みたいなもんだった……。

・よく考えたら他人にとても失礼なことを言ってしまったことに20分後くらいに気づいて、いまさら謝ることもできずにウワアアアアってなるのをあと何回繰り返せば上手に人間生活をやれるようになるでしょう。

 著者は、大学入学のために都会で一人暮らしを始めた当時、世間にうまく溶け込むことができず、そのうちに生活がおろそかになってしまった。生活とは大変に地道なものであって、あまりにも現実めいたものだと悟った。それは子育においても同様だった。実家で暮らしていたころの自分は家事が得意なつもりだった。親の育て方には疑問を持ち、それを反面教師にしていこうと思っていた。けれども、いざ自分が子育てを経験すると「みんな、人間だったのだ」と実感した。それが分かったとはいえ、コミュニティでの振る舞いにまだまだ失敗して引きずってしまう自分がいる。

 甘木氏は本書についてこう述べる。

「程度の差こそあれ、現在つらさを抱いてすごしている方がこの本を読むことで、“ああこんなに気楽に愚痴っていいんだ”“自分もけっこう頑張っているじゃないか”と思ってもらえたら。そしてほんの少しだけ気持ちが軽く、楽しくなってもらえたら、こんなにうれしいことはありません」

「自分は生きづらい人間なのではないか?」と感じても、「それくらいで弱音を吐くな」「考えが甘い」と思われてしまうのが嫌で、なかなか気持ちを他人に言えないという人もいるだろう。それでも、あなたと同じ考えの人がきっと周りには存在している。何より、甘木氏本人が、自分のつぶやきが多くの共感を得ているということに安堵したという。

 押し寄せる生活に踏ん張って逆らい続けるのもいいことかもしれない。しかし時には、SNSという気楽な場所で、仲間で愚痴や悩みを語らうという息抜きをしてみてはいかがだろうか。

文=ジョセート