環境は自分で作れる!?「自分勝手」とは異なる新しいコントロール術のコツ

生活

更新日:2019/5/31

『勝間式超コントロール思考』(勝間和代/アチーブメント出版)

 コントロールという言葉に対して、どのようなイメージを持っているでしょうか。コントロールには「支配」「統制」という意味合いがあるので、ネガティブなイメージを持つ人も多いはずです。そんなコントロールへのイメージを変えるのは『勝間式超コントロール思考』(勝間和代/アチーブメント出版)。本書では、コントロールとは「自分も他人も大事にしつつ、時間やお金を効率的に使いながら自分のイメージ通りに物事を進めるためのもの」であると定義しています。仕事、お金、人間関係、家事、そして娯楽のコントロールが可能になれば、私たちはもっと主体的に暮らしていくことができるのです。

 頑張っているはずなのに、上手くいかないのは、努力が足りないから、力がないから、そう自分に言い聞かせて苦しい思いをしている人やあきらめてしまっている人は相当いると思います。なぜなら、私たちは子どもの頃から「努力すること」「頑張ること」がいかに重要であるかを刷り込まれてきたからです。そのため、努力すれば何でもできるという思い込みを持っている人は多いでしょう。

 本書の中で、はっとさせられたのは「自分ができないことも努力すればできる」と思うことは勘違いである、という指摘です。特にコントロールは女性にとって重要な視点であることが書かれています。「女性に不利な企業や職業を選んで、そこでわざわざ予想していた苦労をする人は、自分の力を過信している」という指摘にドキッとさせられる人は少なくないのではないでしょう。

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 日本社会はいまだに男性中心の社会構造になっています。その中で女性が活躍するためには、自分でコントロールできる環境づくりが必要です。コントロールのデザインという視点が欠けていると、仕事はフルタイムの男性並み、家事は専業主婦並みの重荷を背負うことになってしまいます。社会的な生き物である私たち人間が、自分の努力によって周りに影響を与えられるのはわずか1~2%にしかすぎないそうです。残念なことに、自分のコントロールの範囲外にあるものはどんなに努力をしても報われない、ということになります。

 では、コントロールの範囲を広げるにはどうしたらよいのでしょうか。そのうちの1つが「選択肢を広げること」です。我慢は美徳という考え方を著者は覆します。選択肢を増やすとは、我慢しなくても自分が快適に過ごせて、かつ相手に迷惑を掛けないようにするということ。そのためには、気づきが必要です。気づきを得るには、知識が欠かせません。知識を得るために、私たちはいくつになってもあらゆる機会をとらえて貪欲に知識を得ていこうとする姿勢が大切です。

 本書のユニークな点は「女性」の目線が反映されていることかもしれません。著者の最近の情報発信では、家事を効率化しつつ、健康や食に対するリテラシーを高め、自炊することの重要性に関するものが多くなっています。巷には仕事術や時間術などのノウハウ本がたくさんありますが、多くは男性目線で書かれているものです。家事や健康に言及し、暮らし全般を最適化するという考え方を伝えるのは女性ならではと感じます。

混雑しているコンビニの列に並ぶことが苦にならない柔軟性を持ち続けるのは危険

 どうしたら不愉快なことを避けて満足度を高められるかを調べたり考えたりするのは、誰でもできると伝えています。実際に、著者はお金や時間に余裕のなかった20代の頃に会社の福利厚生を隅々まで調べるなどして、限られた予算の中で楽しむための工夫をしていたそうです。

 著者の文体は淡々としていますが、とてもシンプル。アイディアをサポートする文献やデータも豊富で説得力があります。自分の人生を主体的に歩んでいきたいと思うすべての人に参考になる考え方が満載の一冊です。

文=いづつえり