人口増加による食料危機への意外な切り札──それは「虫」! 実は美食でもある虫料理の秘めたポテンシャルとは

社会

2019/5/13

『新世紀食糧記ムシグルメン マイマイと人類虫食計画』(飲茶:原作、古本ゆうや:漫画/PHP研究所)

 小生が初めてイナゴの佃煮を見た時は、その姿に一瞬の戸惑いを感じた。しかしエビやカニと同じ節足動物だと思い直し、白いご飯にのせて野趣あふれる味を堪能したものだ。虫を食べると聞いて嫌悪感を示す人は少なくないだろう。しかし日本でも古くから重要なタンパク源として食されており、「国際連合食糧農業機関」においても、世界的な人口増加による食糧難対策の一端を担うと「昆虫食文化」は期待されているのだ。『新世紀食糧記ムシグルメン マイマイと人類虫食計画』(飲茶:原作、古本ゆうや:漫画/PHP研究所)は、少々ネタのようなタイトルではあるが、「虫食(ムシクイ)」の何たるかをマンガで楽しく教えてくれる。

 小学生男子「児玉おさむ」のもとに突如現れた不思議な少女「マイマイ」。彼女は同じクラスへと転入してくるのだが、マイマイの持参した「虫入り弁当」を食べたことによりおさむはその魅力を知る。そんな彼が「虫食」のスペシャリストとして成長していく姿を描いたマンガを軸に、虫の調理例を挙げながら虫を食べることの意義を学べるのだ。

 まずマイマイの持ってきた「虫入り弁当」だが、いきなり「セミの素揚げ」というのには驚いた。物語の中でもおさむとそのクラスメイトはたまらず拒絶し、マイマイは孤立してしまう。その姿を見たおさむは持ち前の正義感から、思い切ってセミを口にするのだが、ナッツのような味わいに意外な美味しさを感じるのだった。

 小生も子供時代に何度もセミ捕りをしていたが、食べるなどとは考えもしなかった。しかし、古代ローマでも食べられていたと記録があり、更に古代中国では貴族のグルメ食だったという。しかも本書では「あらゆる虫たちの中で最も食べやすく美味しい」と紹介されている。読者諸氏は2018年の夏、埼玉県川口市の公園に設置された「食用を目的としたセミの幼虫等の捕獲はやめてください」という看板が話題になったことを覚えているだろうか。実はセミ料理とは、知る人ぞ知る美食だったのである。

 虫が古代中国で貴族のグルメだったと先に述べたが、現在でも虫たちは高級食材として利用されている。代表的なのはフランス料理の「エスカルゴ」だろう。要はカタツムリだが、そもそも陸生の巻貝なのでサザエなどの仲間だ。そう考えればなんら抵抗なく食べられそうではある。ちなみに代表種である「ブルゴーニュ種」は三重県松阪市で養殖されており、実は世界初の養殖成功例だそうだ。

 フランスの高級食材が日本で養殖されているのも面白い話だが、そもそも日本ではイナゴの佃煮の他に、ハチノコやザザムシなどが古くからの郷土料理として知られる。ハチノコは主にクロスズメバチの幼虫とサナギから作られる甘露煮が有名か。またザザムシとは特定の虫ではなく、カゲロウやトビケラの幼虫のことだ。それらは川の中で成長するのだが、ザーザー流れる川で採れるからザザムシと呼ばれるようになったという。これらもまた高級食材である。

 本書には虫たちの捕獲法や調理例などが詳細に書かれており、自身で試したくなる読者も少なくないと思う。しかし、スズメバチの幼虫を捕獲するにはその巣を狙う必要があり、危険も伴う。またザザムシに至っては資源保護のために漁協の許可も必要で、素人には難しい。また、どうしても虫に対して抵抗感がある人もいるだろう。そんな人たちに無理強いするのは、決して許されることではない。勿論、本書はそれらの注意事項にも詳しいのでしっかり読んでほしい。

 これから虫たちの活動が活発になる季節。いきなり「虫食」は無理でも、まずは童心に返って虫捕りから始めてはどうだろうか。とはいえ、自分で捕まえると愛しさが先だって食べられなくなるかも?

文=犬山しんのすけ