うつになっても「出産をあきらめない」という選択肢。すべての女性の希望になるコミックエッセイ

出産・子育て

2019/5/21

『うつ妊! 〜私、妊娠しちゃダメですか?〜』(月ヶ瀬ゆりの:著、ゆうきゆう:監修/講談社)

 うつ病を患っていると、誰もが思い描くような“普通の幸せな家庭”を手に入れることが難しい…と感じられてしまうこともあるかもしれない。女性の場合は、出産に対して強い不安を抱くこともあるだろう。

「薬を飲んでいても、妊娠できるの?」
「妊娠中、自分の心が耐えられるか心配…」

――そんな想いは人に相談しにくいため、心の中で重い鉛のような存在にもなってしまいやすい。

『うつ妊! 〜私、妊娠しちゃダメですか?〜』(月ヶ瀬ゆりの:著、ゆうきゆう:監修/講談社)は、そう悩んでいる女性に希望と勇気を与えてくれるコミックエッセイ。本作は、著者であるゆりのさんの赤裸々な体験談を、精神科医のゆうきさんが監修したもの。実体験を元にしているからこそ、同じ境遇で苦しんでいる妊活中の方や妊婦さんの心にも響きやすい。

■うつ病だけど妊活ってできるの? という不安

 うつ病を患っているゆりのさんは、漫画家である夫・しろさんと共に、自分たちの子どもが欲しいと望んでいた。しかし、ゆりのさんにはある問題が…。実は、彼女は体に深刻なダメージがくるタイプのうつ病で、薬の副作用による「性欲減退」にも悩まされていた。大好きな人と性行為をしようとしても膣がカラカラに乾き、まったく濡れない。そのため、強い痛みを感じてしまうのだ。

「このままではいけない…」と思ったゆりのさんは産婦人科へ足を運び、アドバイスをもらいながら、心の中に秘めていた不安を吐露する。彼女が産婦人科医へ尋ねた問いは、うつ病で苦しんでいるすべての女性の心を代弁しているかのようだ。

 その後、ゆりのさんは自分のメンタルや体調と向き合いながら妊活を進めていき、無事に我が子を身ごもることができた。しかし、本当に大変なのはここから…。うつ病の妊婦という立場のゆりのさんは、ハイリスク出産と判断され、精神科のある病院でないと出産できなかったのだ。

「この子を産むためなら、頑張ろう」――そう決意したゆりのさんは自衛隊病院での出産を決意する。似たような境遇のママ友とコミュニケーションを取ったり、担当医のアドバイスに熱心に耳を傾けたりしながら、愛しい我が子を無事に産めるよう奮闘していくのだ。

■正しい知識を持って、ポジティブな「うつ妊」を

 うつ病を題材にした書籍は、シリアスな空気が漂っていることもあるものだ。だが、本作は“うつ病の妊婦”という重くなりがちなテーマを、明るく前向きに取り上げる。

 作中には、同じ境遇の方が不安を解消できるよう、知識やアドバイスも盛り込まれている。例えば、うつ病中に妊娠するとお腹の赤ちゃんのために、「今飲んでいる抗鬱剤を止めたほうがいいのでは…?」と心配してしまうこともあるだろう。ところが、実はそれがうつ妊娠においてとても危険な行為なのだそう。

 よかれと思った自己判断が、逆に赤ちゃんの命を危険にさらしてしまうこともあるので、くれぐれも注意していきたい。

 また、妊娠中はホルモンバランスの関係で、うつの症状が悪化してしまうこともある。しかし、そうした時は自分を責めず、頼れる人に甘えることも大切だ。心身のコンディションが最悪で仕事や家事などがこなせない日には自分自身に苛立ちを覚えてしまいやすいが、そんな時こそ本作のこのページを思い出してみてほしい。

 うつ病は真面目な性格の人ほど、かかりやすい病気だと言われている。だからこそ、頼れる場所や人を見つけて、自力だけで頑張ろうとしないことが大切なのだ。

 いま、心身共に健康な方は、「自分はうつ病とは無縁」だと考えているかもしれない。だが、ゆりのさんも2016年に突然倒れるまでは、入院したことすらない、健常者だったのだ。厚生労働省が3年ごとに行っている「患者調査」によると、平成26年に医療機関を受療したうつ病・躁うつ病の総患者数は112万人で、その数は年々増えていることが明らかになっている。

 こうした調査をみると、うつ病は身近で誰にでも起こり得る病気だと考え直す方も多いだろう。だからこそ、女性は自分がうつ妊した時、そして男性は大切なパートナーがうつ妊で苦しんでいる時に、本作のアドバイスを活用してほしい。幸せな家庭を築くチャンスはちゃんとあるのだ。

文=古川諭香