焦らしプレイにも「好き」とは言わない! 駆け落ちした双子の妹のために、兄が花嫁に成り代わる! 娶られBL『ララの結婚』
更新日:2019/6/13

不器用な男同士の夫婦生活にときめく…。
『ジェンダーレス男子に愛されています。』や『旧繁華街袋小路』、『カッコウの夢』などを描いてきたためこう著の『ララの結婚』(リブレ)は、異国情緒あふれる世界観の中で繰り広げられる娶られBLだ。
ある日、富豪であるウルジが大事な妹・ララに惚れ、嫁にしたいと言ってきた。しかし妹には心に決めた相手がいる。結婚から逃れるため、彼女は駆け落ちすることを決める。そして、ララの双子の兄であるラムダンはララを無事に逃がすため、彼女のふりをして花嫁に成り代わったのであった――。
妹思いのラムダンは、ララと瓜二つの顔で、女装をすれば誰もが簡単に騙されてしまうほど麗しい。筋肉質で男らしいウルジに抱かれている姿は、美しい女性のような可憐さがある。しかし、服を脱がせばそこにはしっかりとした胸板と男性器がある。
最初のうちは、真っ暗な部屋でのセックスによりウルジがラムダンの性別に気づいていない、という設定だったため、下着をつけた状態で愛撫が繰り返されるのが、逆にエロい。紐のパンツからはみ出そうな、そりたったラムダンの男性器は、決してウルジに触られることなく放置され、挿入により射精してしまう。
しかし、ラムダンの妹のための策略は、ウルジには最初からすっかり見透かされていた。というよりも、ウルジはもともとラムダンのことを狙っていたのだ。ウルジは後継ぎが必要な名家の息子だが、子はいらない、愛する人とともにいたい、という一途な想いをもってラムダンに迫る。
相手の意思など気にせず、無理やり嫁にしてしまう、それはとても強引な行為だ。ラムダンはセックスのとき以外は徹底してウルジを拒否し、何度も彼の元から逃げようと試みる。焦らしプレイをされても、決して好きだとは言わない。おそらく媚薬のようなものを使われているのか、体ばかりは敏感に反応してしまうのだが…。
妹の駆け落ち相手や、終盤に登場するウルジの兄など、まだまだ謎も多い状態で終わった第1巻。家族にも見捨てられ、予想外に男とのセックスに感じて自己嫌悪に陥るなど、ラムダンにとってはなかなか辛いことの連続であったが、不器用だが心底ラムダンを愛しているウルジがどうしても憎めなかったり、少しずつ自分の居場所ができ始めたり、これからの関係性の発展に期待したくなるストーリーでもあった。とにかくラムダンが報われることを望むばかりだ。
文=園田菜々