ヒーローに憧れた『鈴木先生』の作者が描く伝奇ヒーローコミック!『古代戦士ハニワット』とは!!?

マンガ

更新日:2019/5/26

『古代戦士ハニワット』(武富健治/双葉社)

 幼少の頃、男子の多くは『仮面ライダー』などの「ヒーローもの」を観て育ったと思う。「愛」や「正義」を教えてくれたヒーローたちは少年たちの憧れであり、その想いを抱いたまま大人になった人もいるはずだ。『古代戦士ハニワット』(双葉社)の作者・武富健治氏もまさにそのひとりで、中学生の頃に原型を描いた『ハニワット』がついに『漫画アクション』で連載され、このたび単行本が2カ月連続で刊行されることになった。

 物語は長野県の「ある寺」に突然、「ドグーン」と呼ばれる謎の物体が出現するところから始まる。ドグーンはいわゆる「土偶」を人間よりさらに大型化した形状で、自律歩行をしているが生物なのかどうかも不明だ。さらにドグーンには「剣技型」や「光撃型」などのタイプがあり、変型してタイプを使い分ける「自在型」も存在する。人間の力では太刀打ちできない、極めて危険な怪物なのだ。

 偶然、ドグーンが現れた現場に居合わせた「仁」「クマリ」「柔里」「玉池コト」の4人。彼らを中心に物語は展開していく。コトを除く3人はドグーンのことを知っており、仁はそれを「蚩尤(しゆう)」と呼んだ。彼らは「神道学部特殊祭祀専攻学科」に在籍し、蚩尤に対抗するための「特殊祭祀」の準備を整えていたのだ。もちろんコトも門外漢ではなく、かつて彼女の姉が事故死した現場でドグーンを目撃していた過去を持つ。キャラクターそれぞれの事情が複雑に交錯する「群像劇」も、作品の魅力のひとつだ。

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 そして最大の見せ場は、やはり「蚩尤収め」と呼ばれる「特殊儀式」だ。荒ぶる蚩尤の魂を鎮めるため、「埴輪徒(はにわと)」の魂を「埴輪土神(はにわどしん)」の体に移すのである。巫女たちが舞い踊る古式ゆかしい儀式の中、埴輪徒たる仁の魂は埴輪土神の中へ。そしてついに、ドグーンに対抗しうる力を持った古代戦士が誕生する!

 本作は土偶や『日本書紀』といった日本古代のテーマをふんだんに取り入れた「伝奇ヒーローもの」である。作者が中学生の頃から温めていた構想であり、さまざまな仕掛けが用意されているはず。今後もドグーンや仁たち「埴輪徒」を巡り、多くのドラマや激しい戦いが展開されていくことになるだろう。かつてヒーローに憧れた者たちよ、刮目せよ!

文=木谷誠