ビートルズの解散は税金問題がきっかけ!? いつの時代も変わらない? 古今東西の税金事情に迫る

社会

2019/6/12

『脱税の世界史』(大村大次郎/宝島社)

 2019年10月1日から、いよいよ消費税が10%に増税される。飲食料品と新聞の消費税率は今までどおりの8%だが、この2%の差はバカにできない。「高額な買い物は増税前に…」と考えている人も多いのでは?

 国家にとって税金が必要だということはわかっているけれど、できる限り税金の出費は抑えたいと思うのは、一般的な消費者も大金持ちも同じ。いや、むしろ巨万の富を得た人々ほど、税金対策――あるいは脱税!?――に四苦八苦している…?

 本書『脱税の世界史』(大村大次郎/宝島社)では、そんな古今東西の脱税事情について、元税務調査官の著者がそれぞれの背景を読み解いていく。古代ギリシャのユニークな脱税密告制度や、脱税の横行によるローマ帝国の崩壊、ヨーロッパの国王たちを苦しめた教会税など、いつの時代でも国の隆盛には税金問題が絡んでいるというのは興味深い。

 著者は本書の中で「国家が隆盛するときというのは、だいたいにおいて富裕層がちゃんと税金を払っているとき」と語っている。では、多くの富裕層が万一脱税してしまうとどうなるのか? その答えとして「富裕層からきちんと税金を取れなくなったときに、国は滅びる」という記述が、あとがきにある。だからこそ、脱税に関するニュースが大々的に報道されるのかもしれない。

 とはいえ「せっかく稼いだお金が税金に消えるなんて…」と思ってしまうことは誰にでもあるだろう。ということで、本稿では高額な税金に苦しんだ有名人を紹介しよう。

■ヒトラーは著書『わが闘争』による莫大な収入を脱税していた

 第二次世界大戦を引き起こした中心人物として教科書にも載っているアドルフ・ヒトラー。1925年に出版された大ベストセラー『わが闘争』でも有名だが、同書の収入を脱税していたことが、近年の研究で明らかになった。ドイツの税金問題の専門家がミュンヘンの公文書館で発見した納税記録によると、ヒトラーは1925年からナチス政権獲得の1933年までの間、ミュンヘンの税務当局から納税の督促を受け続けていたという。『わが闘争』の収入は約123万ライヒスマルク(現在の日本の貨幣価値にして約25億円!)で、60万ライヒスマルクの税金が発生していたが、結局納められたのは20万ライヒスマルク程度。既にお金がなかったのか、政治資金として残していたのかは定かではないらしい…。

■ビートルズの解散は税金問題が原因のひとつ?

 世界の音楽市場を拡大した、イギリスの4人組ロックバンド・ビートルズは、レコードデビューから約8年で解散してしまった。その要因のひとつとされているのが、税金対策のために設立した会社「アップル社」のビジネス上の大失敗だ。節税のために会社をつくる理由は、メンバーが個人の収入としてお金を受け取るよりも、会社から配当という形で受け取ったほうが税金は安くなるから。ところが、このアップル社には企業経営や経理の専門家がいないに等しかったため、設立から1年も経たないうちに経営難に…。アップル社の経営危機がきっかけで、メンバー間の意見の対立も生じ、同社設立の2年後に、ビートルズは解散することとなったという。

 消費税増税と聞いて「家計に響く」と嘆いている人は多いだろう。しかし本書を読むと、それとは別の問題が現代日本に潜んでいるかもしれないことに気付かされるはずだ。

文=上原純