アイドルとして生き残るためには、ライバルを“殺処分”するしかない――。アイドル×デスゲーム漫画が登場!

マンガ・アニメ

2019/6/18

『殺処分アイドル!』(野崎アユ/白泉社)

 アイドルとして生き残るのはとても難しいと聞く。可愛くて、歌って踊れる。それはもう当たり前のこと。他の子との差別化をはかり、明確なコンセプトを打ち出し、SNSを駆使してファンに向けた発信を行う。それをしてもなお、トップステージに立てるのはほんの一握り。スポットライトを浴びて笑っている子がいる一方で、泣く泣く衣装を脱ぎ、その世界を去る子たちが大勢いる。2010年頃から「アイドル戦国時代」という言葉が注目を集めたが、その戦乱の世はいまだ続いている。

 そんなアイドルたちの生き残りをかけた闘いを描いたマンガが『殺処分アイドル!』(野崎アユ/白泉社)だ。本作は売れないアイドル「ぱらふる」の山吹れもんを主人公に、アイドルたちがトップを目指して争うさまを描いているが、ここで言う「生き残り」とは、文字通り「命をかけた闘い」のこと。アイドルたちが、死と隣り合わせの「バトルロワイアル」に身を投じていくのだ。

 マネージャーに拉致されてしまったれもんと、その相棒である朱崎りんごのふたり。目を覚ますと、そこはテーマパークのような場所だった。集まっていたのは同じ事務所に所属する研究生、アイドルの卵たち。そして、彼女たちの前に現れた謎のウサギから、恐ろしい言葉を聞かされる。

“これは社運をかけた一大総選挙!
トップアイドルの座を巡り 戦って欲しいというわけさ!
その命をかけてッ
第して…第一回「アイドる☆バトルロワイアル」!!“

 この殺し合いは生中継されており、視聴者投票によって命運が左右されるという。そして、生き残った者に用意されているのは、トップアイドルとしての地位。もちろん、彼女たちは戸惑い、泣きわめく。しかし、実際に死んでしまった仲間の姿を目にした瞬間、スイッチが切り替わる。生き残るためには、殺さなければいけない――。

 本作の絵柄は少女マンガテイストであり、とても可愛らしい。登場する女の子たちは、みな魅力的に描かれている。だからこそ、目玉が飛び出したり、顔面が焼けただれてしまったりという「殺戮シーン」が大きなインパクトをもって迫ってくる。さらに、先程まで笑っていたかと思いきや、顔を歪めて欲望を全開にする少女たち。このギャップにデスゲーム好きはやられてしまうだろう。

 登場人物が女の子ばかりなので、百合っぽい展開も用意されている。特に、バトル開始早々裏切りを見せたりんごがれもんに寄せる感情は、非常に複雑だ。明確な殺意をあらわにしつつも、突然キスをする。そこに彼女の胸の内が表現されているようなのだが、第1巻では真意が明らかにされていない。

 可愛い少女たちが殺し合う様子は、もちろんフィクションとしてしか受け止められない。しかし、現代のアイドル事情を考えると、本作を「ありえない」と笑って済ますことはできない。自分自身がトップになるために、闘い抜く。そのためなら、どんなことでもやってやる。本作は、実際のアイドル市場を暗喩している作品と言えるだろう。

 はたして、れもんは生き残れるのか。そして、りんごとの関係は修復されるのか。次に誰が「殺処分」されてしまうのか。今後の展開が胸熱な、アイドル×デスゲームものの誕生だ。

文=五十嵐 大