お酒で“口説く”のは正解だった? 日常のなにげない現象の理由がなかなか深い

暮らし

2019/6/25

『誰にも覚えがあるヘンな感覚の正体』(博学こだわり倶楽部:編/河出書房新社)

 意識せずとも出くわしうる、日常のささいな現象。例えば、道ばたで人を避けようとしたら“お見合い”状態になってしまう。テスト前夜になるとなぜかきまって掃除を始めたくなるなど、誰しも一度は経験があるはずだ。

 形あるところには理由があるもので、なにげない現象の秘密を解き明かしている一冊が『誰にも覚えがある ヘンな感覚の正体』(博学こだわり倶楽部:編/河出書房新社)だ。

■向こうから来る人と“お見合い”状態になってしまうワケ

 路上や廊下で向こうから誰かが来たとき、右へ避けようとしたら相手も右へ、左へ避けようとしたら相手も左へと“お見合い”状態になってしまった経験は多かれ少なかれあるだろう。じつは、この現象は「連続回避本能」と呼ばれている。

 とりわけ起きやすいのは急いでいて、相手が突然目の前へ現れたように感じられるとき。理由は、相手の目線や瞬間的な動きにつられてしまうからと推測されているが、お互いが相手の直前の動作と反対に動けば「大丈夫だろう」と判断してしまい、スムーズにすれ違うことができなくなってしまう。

 なお、この現象を避けるには、当たり前のことながら相手の進路をあらかじめ予測しておくのが肝心。いったん立ち止まってみるのも、有効な手段だとされている。

■テスト前夜に掃除してしまうのは自分を守るため

 試験前夜。一夜漬けに励もうとしたところ、机の上を掃除したりマンガを読んだりとついつい他のことに気を取られてしまった経験もあるはず。時間が経つにつれて自分の集中力のなさにガックリ来るときもあるが、この現象に関わっているのは「セルフハンディキャッピング」と呼ばれる心理だという。

 本来やるべきことがあるはずなのに、他のことに気を取られてしまう最大の理由は失敗を恐れる気持ちがあるから。そういった行動によりある種の予防線を張るのは「獲得的セルフキャッピング」と呼ばれ、例えば、試験前に「体調が悪い」「勉強していない」と言ってしまうのは「主張的セルフキャッピング」と呼ばれている。

 また、この心理を働かせていると成功するにしろ失敗するにしろ自分を守れるのも特徴だ。至らない点があっても、失敗したときは言い訳ができるし、成功したら「不利な状況下にも拘わらず自分には能力があった」と認められるため、いずれにせよ自分の気持ちを落ち着かせることができる。

■お酒の力を借りれば自分をもっと魅力的に見せられる

 最後に、男女の関係に言及した一説も紹介したい。お酒の場で“口説く”のは常套手段の一つであるが、この方法にもじつは「ビア・ゴーグル効果」と呼ばれる心理学的な働きがあるとされている。

 ビア・ゴーグルの名前は、文字通り“ビア=ビール”から取られたものだ。酔うとアルコールにより気分が高揚し、理性も麻痺するために異性がより魅力的に見えるようになる現象だが、実際に、アルコールの摂取が性欲を昂進させるという研究結果もあるという。

 また、異なる理由としては「アルコールの摂取により、非対称性の認知が低下するため」と結論付けられた仮説もある。人はそもそも、左右対称の顔ほど魅力を感じる傾向にあるというが、アルコールの力により非対称性が気にならなくなり、結果として相手に求める“ハードルが下がる”というわけだ。

 さて、本書にはこれらを含めて100種類もの“ヘンな感覚”にまつわる解説が収録されている。なにげない現象であっても、理由を知ると思わず「へぇ」と言いたくなるのも不思議。ともすれば“くだらない”と一蹴されてしまいそうなものほど、掘り下げると深いというのも味わえるはずだ。

文=カネコシュウヘイ