夢もサッカーも「ゴールからの逆算思考」が成功の秘訣! 「99%抜けるドリブル理論」の真髄に迫る

スポーツ・科学

2019/7/12

『ドリブルデザイン 日本サッカーを変える「99%抜けるドリブル理論」』(岡部将和/東洋館出版社)

 メッシのドリブルは静止状態からトップスピードへと一瞬で加速する。原口元気は上半身が柔らかく、ドリブル中にディフェンスに触れられてもスルリと前へ抜けていく。乾貴士のカットインの角度は普通の選手よりも深く、その点がワールドクラス……。

 ふだんサッカーを見ている人なら、「あの選手のドリブルって確かにそんな感じだな」と納得する描写だろう。『ドリブルデザイン 日本サッカーを変える「99%抜けるドリブル理論」』(岡部将和/東洋館出版社)は、このような有名選手のドリブル分析を交えながら、著者独自の「99%抜けるドリブル理論」をロジック・テクニックの両面から紹介していく本だ。

 特におもしろいのがロジック編。キーワードとなるのは「間合い」だ。

 一般的に「間合い」というと「対面する相手選手(ディフェンス)との距離」のことを指すが、岡部は「間合い=距離×角度」と定義。ここでいう角度とは、「ゴールとディフェンスが織りなす角度」のことだ。

自分―ディフェンス―ゴールが一直線に並んでいれば180度、自分がディフェンスの真横にいれば90度の状態だ。【本書P.21より】

 そして岡部は、ディフェンスの足が届かない距離にボールを置き、「勝てる」と確信できる角度に忍び込んだときだけ勝負をすれば、自分のミスがない限り抜ける=99%抜けると解説している。

「ケンカの必勝法は”絶対に勝てる相手”としか戦わないことだ」みたいな話だが、「99%抜ける状況」や「絶対に勝てる相手」を見極めるには、それ相応の知識や経験、分析力が必要だ。骨子の部分だけを文字にすると「そりゃ抜けるだろ」と感じてしまう岡部の「99%抜けるドリブル理論」だが、経験に裏打ちされた知識と細かな状況の分析は、じっくり読んでいくとすこぶる面白い。

ディフェンスが届かない距離を保つ→円状に迂回する→相手が重心を後ろに下げて後退せざるを得ず、自分が最高速で駆け抜けられる「縦ドリブル」で抜き去る……というのが岡部の「99%抜けるドリブル理論」だ。【本書P.31より】

 著者の岡部将和はFリーグ(日本フットサルリーグ)で活躍した経歴を持つ人物で、現在の肩書は「ドリブルデザイナー」。ネイマールらスター選手との共演も果たしてきた動画は各種SNSで拡散され、総再生数は1億PVを超えている。その動画ではド派手なドリブルテクニックにばかり目が行くが、本書を読むと岡部はロジカルに思考する力も桁外れだということが分かる。

 そしてその思考法は「ゴールからの逆算」であるのも特徴。岡部は「これなら99%抜ける」という状況をまず想定し、そこへ辿り着くまでの過程を描いていくように、自身の夢を描く「夢ノート」も夢からの逆算で書いているという。逆算的に考えることで、無駄な努力も減り、計画的にゴールへと進んでいけるのは、サッカーも夢も同様だ。

 本書は「サッカーのドリブルを解説する」という極めて専門的な内容ながら、ビジネス書にあるような成功のヒントも多く詰まっている。それは、「ボールを失うかもしれないが、勝負を仕掛けて相手を抜けば大きなチャンスになる」というサッカーのドリブル突破が、人生における“リスクを取った挑戦”のメタファーにも見えるからだろう。本書はドリブルが上達する本、ドリブルを見るのが面白くなる本であるだけでなく、「なぜサッカーを見る人はドリブル突破で熱狂するのか」が分かる本でもあった。

文=古澤誠一郎