コンビニ袋の成分がめぐりめぐって子どもの体内に蓄積!? 不都合な化学物質が健康に及ぼすヤバい影響

スポーツ・科学

2019/7/29

『地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの(ブルーバックス)』(日本環境化学会/講談社)

 まずはこんなニュースを紹介しよう。

「九州大学は6月26日、環境化学物質のひとつであるメチル水銀(MeHg)の低濃度曝露が、心不全の病態を悪化させる分子機構を明らかにしたと発表した」

 環境化学物質とは、何かしらの経緯で環境に放出される化学物質のこと。平たく言えば、人がごく普通の日常生活の中でも取り込んでしまう恐れがある化学物質、ということだ。

 ニュースにある「メチル水銀」は公害・水俣病の原因として有名だが、そんな恐ろしいものを、魚介類などを通して誰もが摂取してしまう危険性が潜んでいるのだ。

 こうした環境化学物質の危険性をさまざまな角度から私たちに教えてくれる1冊が、『地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの(ブルーバックス)』(日本環境化学会/講談社)だ。

 本書は、ダイオキシンなどを含むPOPs(残留性有機汚染物質)、マイクロプラスチック、水銀、メチル水銀、重金属、PM2.5などの化学物質を取り上げるほか、化学物質と健康やアレルギー、免疫異常などの問題に関しても触れている。

 特にメチル水銀に関しては、「子どもの発達への影響」にフォーカスしているため、化学や環境の専門書はちょっと難しいかもと思っていたお母さんやお父さんにも、ぜひとも手にしていただきたい1冊だ。

■コンビニ袋やプラゴミの成れの果て「マイクロプラスチック」

 まず紹介したいのが「マイクロプラスチック」(本書第2章)だ。本書によれば、マイクロプラスチックとは「直径5ミリ以下のプラゴミ」だ。もちろん最初からこんなに小さいのではない。元々はコンビニ袋などのように、世界中の人々が日々使い、放出するプラゴミであり、それらが本書でも解説されている複雑なプロセスを経て小さくなって海へ溜まるのだ。

 小さくなることで、海の生物たちや鳥類などがエサだと思って誤飲し、体内に蓄積され、中にはそれらの個体が食材となって、人間の食卓へと戻ってくるケースもある。

 本書には、プラスチックが、いかに有害な化学物質の複合的生成物であるかが記されている。人間はいったいどこまで、生命を誕生させた母なる海を汚染しようとしているのだろう…。本書を読むと、そんな人類の愚かさにも直面し、世界屈指のプラゴミ排出国の日本人としての自覚を、新たにせざるを得なくなるのである。

■誰もが知っていて誰もが知らない「PM2.5」

 中国関連のニュースでは、「PM2.5が日本にも飛来!?」などと報じられている。筆者もそのたびに、「PM2.5ってどんな汚染物質なんだ?」と思ったまま、特に調べもしなかった。

 本書によれば、「PM2.5とは、空気中に浮遊している、目には見えないほど小さい直径2.5マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)以下の粒子のこと」であり、あるひとつの化学物質ではないという。

 とはいえ、決して安心・安全なわけではない。「呼吸により吸い込むことで、人の健康にさまざまな影響を及ぼすことが知られています」という。

 主な発生源は、工場、ディーゼル自動車排ガス、道路粉塵、野焼き、廃棄物焼却、航空機、船舶など。また意外な発生源として、調理もあげられており「魚を焼いたり炭火で肉を焼いたりする際に発生する白色や黒色の煙がPM2.5なのです」と説明されている。

 本書にはさまざまな化学物質が登場し、ケースバイケースで「対応策・予防策」もきちんと提示されている。しかし、化学物質による健康被害は、取り込んでしまった後、ときにはかなりの長期間を経て、体の異変に気づくといったケースもある。

 誰かにその責任を取ってもらおうと思っても、多くの場合それはかなわないことが多い。それは、人類が無数に製造してきた「不都合な物質=有用な性質だけでなく毒性を持った化学物質」には、
(1)目に見えない
(2)環境中に広く拡がり、その影響を捉えにくい
(3)影響評価が、人々の価値観によって大きく変動する
という特徴があるからだ。

 本書のタイトルには「地球をめぐる」とある。つまり、何気なくポイ捨てしたプラゴミが川から海へ流れ込んで、いつしかマイクロプラスチックにもなる。本書を読めば、「レジ袋有料化」が対策としては序の口でしかないことがわかるだろうし、地球環境のために自分にできることがいくつも思いつくようになるはずだ。

 それにしても、人間はなぜ、身の丈に合わない代物を発明し、母なる地球や他の生命を脅かすのだろうか。そこまでして、どんなに豊かな未来が待っているのだろう…そういう疑問は尽きない。

 とはいえ、私たちを取り巻く現実をしっかりと認識することは大切だ。化学物質の現状と影響を知り、そして子どもを持つ方々や地球の未来をなんとかしたいと願う方々は、ぜひ本書を手にしていただきたい。

文=町田光