大富豪の父が遺した最期の言葉とは? 死を前に語られた幸せのコツ

暮らし

2019/7/31

『幸せのコツ』(荒川祐二/自由国民社)

 世の中には非情な親もいるようだが、親とは本来こういうものである。そう共感できたのが『幸せのコツ』(荒川祐二/自由国民社)だった。筆者の父自身は決して富豪ではなかったが、地主の家という恵まれた環境に生まれたところから一転し、衰退した実家の立て直しに自身の事業にと奔走しながらも、晩年は家族に囲まれて幸せに暮らすことができた。

 著者である荒川祐二氏は4人兄弟の末っ子だが、筆者も兄弟が多く、しかも上とは年の離れた末っ子であることも共通していて親しみが湧いた。

 本書は、荒川氏のブログに綴られてきた内容に、荒川氏の父親が亡くなるまでの2週間やその間父親から贈られた貴重な言葉を加筆したもの。全体の3分の2ほどがその2週間を綴ったものである。正直、親の余命を知ることができたのはうらやましいと感じた。荒川氏自身も余命を聞かされたことについては同様に感じたようだ。ちなみに筆者は父が亡くなる1週間ほど前に会っているが、ちゃんと死期を知っていたらもっと気の利いた話ができたろうにと思う。

 荒川氏は父の余命を医師から聞かされて以来、父からの言葉を一言一句逃さず大切に残すことに務めた。荒川氏の父親は、一代で50店舗を超える店舗数を実現した飲食店経営者である。これは見習いたい素地は十分だ。ブログや本書にも少しだけ写真が添えられているが、非常に温かい人柄であることがうかがえる。

 そんな荒川氏の父親がかけ続けた言葉はときには厳しいものもあるが、根底に感じるのは深い愛情だ。本書のタイトルには「大富豪 父の教え」という言葉が添えられている。そのため、豊かな暮らしを引き寄せるためのヒントと受け取る人もいるかもしれない。しかし、内容はそんな単純なものではない。人にとって大切なこと、外してはならない考え方、周囲への愛情の向け方など、父親自身が実践してきた幸せになるコツなのだ。

 荒川氏の父親のエピソードで「さすが経営者!」と驚嘆したのは、息子の結婚祝いとしてラーメン店の経営をさせたことである。ただし、本書でも触れているが決して業績の良い優良店をプレゼントされたわけではない。いきなり借金を抱えて立て直しをさせるところから始めるという、まさに「獅子の子落とし」ともいうべき祝福というか試練を与えているのだ。荒川氏がみごとにクリアしているところも素晴らしい。やはり血なのだろう。

 子どもは親の影響を受けて育つ。だからこそ、親がどんな姿を見せてやれるか、どんな言葉をかけることができるかで人生が大きく変わってしまう。子どもを傷つけたり、自由を奪ったり、自信を失う言葉をかけたりする親ほど罪深いものはないと思う。親の役割とは、自分がいなくなった後に子どもが自分の力で生きていける道筋を立ててあげることだ。それは資産を残すことではなく、いかに大切なことに気づかせてあげるか、考える力をつけてあげるかということではないだろうか。

 親は亡くなっても子どもを見ていてさまざまなことを教えてくれる。必要な支援をしてくれるものだ。筆者は今も亡き両親からいろいろなヒントをもらっている。夢に出ては不思議と解決していることも多い。体がなくなっただけ、ということ。

 本書は子育てに自信を持てない人にも読んでいただきたい。これから事業を始める人、生き方の方向性に迷ったときにも参考になる。亡き両親を思い温かくなる時間をくれた荒川氏に、この場を借りて感謝したい。

文=いしい