世界最高齢のアプリ開発者に学ぶ。いくつからでも遅くない“独学”の心得とは?

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2019/8/1

『独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学び方10か条』(若宮正子/中央公論新社)

 人生は長く、何かを始める上で“遅すぎる”ことはないのかもしれません。「もう一度、お勉強、始めてごらんになりませんか」というやわらかな一節から始まる書籍『独学のススメ 頑張らない!「定年後」の学び方10か条』(若宮正子/中央公論新社)は、世界最高齢のアプリ開発者として知られる著者が、経験をふまえて“独学”の大切さを説く一冊です。

■やりたいことの原動力は「誰かが喜んでくれること」

 独学と聞くと、机の前で黙々と勉強する光景が思い浮かぶかもしれません。しかし、著者が唱えるのはもっと本質的な部分。その意義は「勉強する本人が主体性を持って、自分で『何を学ぶか』『どのようにして学ぶか』を決めて勉強すること」にあるといいます。

 きっかけはさまざまであるものの、自分なりの「やりたいこと」を見つけるのも原動力になりえます。そのヒントとして、著者が提案するのが「自分が何をしたら、まわりの人が喜んでくれるだろうか」と考えることです。

 著者は過去に、工業高校と盲学校が協力したプログラムに関する企画を見学したことがありました。そこにいたのは、部活でゲームアプリなどを作って楽しんでいる生徒たち。工業高校の生徒たちは視覚障がい者向けのアプリを作るため、盲学校の子どもたち一人ひとりに話を聞き、その中である生徒が「背景色が黄色で字が黒だと読みやすいのでは」と気が付いたそうです。

 意見を汲み取り作られたアプリは、盲学校の子どもたちやそのお母さん、先生たちにも大喜びされたといいますが、やはり“誰かのために”という視点は、自分自身の原動力にもなりうるといえそうです。

■続かなくても大丈夫。何かを始めれば必ず得るものがある

 目標を高く掲げてしまうと、目の前の小さな苦労が“役に立つのか”と不安に陥る瞬間もあるかもしれません。何かを一心に続けるというのもけっしてたやすいことではありませんが、著者はまず“やってみる”ことの大切さを伝えます。

 過去には、たくさんの習い事や勉強に取り組んできたという著者。若い頃、日本舞踊を学んでいた時期もありましたが、自分的に「からっきしダメ」で、母から「全然ものにならなかった。月謝の無駄遣いね」と苦言を呈されたこともあったそうです。

 しかし、そのおかげで舞踊の伴奏が区別できるようになったという著者は「習ったことが無駄だったとは思いません」と振り返ります。その理由は、何かを学べば「始める前より確実に知識が豊富になる」から。身になるものをと探しているといつまでたっても始められないため、まずは自分が「楽しそう」と思ったものに飛びつくことが第一歩になるといいます。

■厳しいノルマはご法度。嫌いになったらもったいない

 勉強に没頭しすぎて、いつの間にか時間が経っていたということもあるかもしれません。今日は「1日3ページ進めよう」とか「週に3時間はやろう」と頑張るのは悪いことではありませんが、いつしか義務になってしまい「せっかく好きで始めたこともでも、嫌いになってしまう」のはもったいないと著者はいいます。

 本当にやりたいことであれば、自分に厳しいノルマを課さずとも自然と手を付けられるはず。前提として「無理やり自分を追い込まなければやらないようなことは、そもそもあなたがやるべきことではないのかもしれません」と諭します。

 日中は忙しいからといって、寝る時間すら惜しむというのも本末転倒。目をこすりながら頑張るならば「さっさと寝て、スッキリした状態で集中したほうが断然頭に入るでしょう」と述べる著者ですが、何事も“ほどほど”が肝心であると気付かされます。

 本書を読んでみると、勉強はそれ自体が目的ではなく、知識を得た先で“何を実現したいのか”が大切だとも思わされます。何かを始めるタイミングは、やろうと考えたその瞬間。きっかけをつかんだあとは、ほどほどに頑張ってみるのがベストといえそうです。

文=青山悠