園芸界のニュートレンド「ビザールプランツ」って?

暮らし

公開日:2019/7/31

『ビザールプランツ』(主婦の友社刊)

 今、感度の高いライフスタイルを送る男性たちの間で人気をよんでいるのが「ビザールプランツ(珍奇植物)」と呼ばれる摩訶不思議なカタチをした植物たち。この度、パキポディウム、灌木系塊根、アガベ、ヒガクシダなど夏型珍奇植物を集めた書籍『ビザールプランツ』(主婦の友社刊)が発売された。

 新たな園芸ジャンルとして注目されている「ビザールプランツ」とは、植物品種のカテゴリーではなく、これまで園芸種としては認知されていなかった植物の希少種の総称。日常的になじみもなく、見慣れない姿に「珍奇、ビザール(bizarre)」という呼び名がついたようだ。神秘的で奥深い魅力にハマる人が増えていて、中でもマダガスカルや南アフリカに自生する大きくふくらんだ塊根を持つ「コーデックス」の人気が急騰中。ビザールプランツを専門にした新感覚の植物屋も続々増えている。ファッションのセレクトショップやインテリアショップでも、ディスプレイしたり、取り扱う店が増えているので、一度は見たことがある人も多いだろう。

 本書は、専門家の少ないビザールプランツの、夏型155品種の基本情報を一挙掲載していて、ナーセリーや趣味家の方々が協力している貴重かつ豊富な写真は見応えがある。熱心なファンやコレクターには十分満足できる内容だが、初心者が読んでも、ビザールプランツの不思議な魅力のとりこになってしまいそう。

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その珍奇な生態ゆえ!? ついている名前もおもしろい

 ビザールプランツの中には、ユニークな和名がついているものもある。

【恵比寿笑い】パキポディウム・ブレビカウレ
「恵比寿さんが笑っている」とは、なんだかとても縁起がよさそう。日本には昭和30年代後半に株が輸入され、古くから愛されてきた品種。短く太い枝を横にいくつも出す、ずんぐりとした株姿が特徴(写真は本書より©サボテンオークション日本)。

【魔界玉】パキポディウム・マカイエンセ
なにやら恐ろしい感じのネーミングだが、2004年と比較的近年に発見された新種で、マダガスカルの西岸に注ぐマンゴギ川の上流、国立公園としても有名なイザロの北方50kmのマケイ渓谷のみ自生する。大輪の黄色い花が咲く(写真は本書より©サボテンオークション日本)。

【鬼に金棒】パキポディウム・ルテンベルギアナム
マダガスカル西部に分布。樹高は9mに達することも。木肌は硬く滑らかだが、幼株や生長点付近には長さ1cmほどのトゲが生える。その姿はまさに、鬼の金棒だ(写真は本書より©サボテンオークション日本)。

まるで火山! まるで怪獣! どうしてこんな姿になった?

 本書では、サボテン、多肉植物を扱う「叢(くさむら)」の小田康平氏が出合ってきた個性豊かな植物を紹介している。その姿は「これぞ、珍奇植物」というべき蠱惑的な魅力がある。「自然の造形美というコトバでは簡単に語れない、長い時間とねじけた物語を内包している姿。記憶に残る生気そのものだ。」とあるように、植物が「生き物」であることを改めて思い知らされるだろう。

複稜鸞鳳玉(ふくりゅうらんぽうぎょく)
下部の複隆が激しく隆起した個体。まるで火山と溶岩を思わせる風貌は見ているだけで圧倒される(写真は本書より©叢)。

碧方錦(へきほうにしき)
深い紫の肌に鮮やかなオレンジの閃光のような斑が入る個体。絶妙な気温と太陽光線と灌水のバランスで見事に色づいた。宝石のような美しさを秘めている(写真は本書より©叢)。

瑠璃丸(るりまる)モンストローサ
稜間に複隆が出る瑠璃丸。下部の木化は苔むした岩肌のよう。時間と植物の生命力が作り出した姿には、人の力ではなし得ない底知れぬ力がある(写真は本書より©叢)。

マニアックだけれどのぞいてみたいビザールプランツの魅力が1冊に

 本書は他に、愛好家の難題と言われる「オペルクリカリア パキプス」の発根に関する誌上実験をおこなったり、アネケンこと横町健氏、叢・小田康平氏、Style of CHIKA氏、など新感覚の植物屋への取材も。さらに、ビザールプランツ扱う26店舗とそのオーナーの植物遍歴紹介、監修を務める国際多肉植物協会会長・小林浩氏の昭和、平成、令和にわたる多肉植物一代記「多肉植物3/4世紀 Three quarters century」など、園芸新世代に向け、図鑑的要素から読み物要素まで揃え、愛好家にはたまらない魅力がつまった1冊となっている。