「オタ活のために有給使っていいですか?」──働くオタク女子へのインタビュー&アンケ ートから見えてきた、お金と時間のやりくり術!

文芸・カルチャー

2019/8/14

『本業はオタクです。 シュミも楽しむあの人の仕事術』(劇団雌猫/中央公論新社)

「ぶっちゃけ、御社では仕事と趣味の両立は可能ですか?」

 …今考えれば、新卒採用の面接のとき、こんなふうに聞いてもよかったんだよなぁ。かくいう私は、フリーライターへの転職(?)を経験した人間ですが、仕事の進行があまりにも辛いとき、将来が漠然と不安になったとき、ついつい転職情報サイトを眺めてしまいます。

 気になる企業の採用情報ページで、絶対に見るのが“勤務時間”、そして“有給消化率”。深夜アニメを見たいから朝が早い職種は無理、聖地巡礼の旅に行きたいから有給の取りにくい職場も無理、けっきょくのところ、今の仕事が自分にはいちばん合ってるんだよな〜なんて思ったところで、気になるのは「はて、現場でよく会うあの人、同業じゃないはずだけど、なんの仕事してるんだろう?」。

 そんな疑問に応えてくれるのが、『本業はオタクです。 シュミも楽しむあの人の仕事術』(劇団雌猫/中央公論新社)だ(ちなみに本記事冒頭の一文は、本書「はじめに」のド頭の一文)。著者である劇団雌猫のみなさんも、平日昼間からTwitterにはりついているアノ人、お金に糸目をつけず海外遠征に飛ぶソノ人の生態が気になっていた模様。本書は、ウェブメディア「Zing!」の連載「オタ女子おしごと百科」でのインタビュー記事に、彼女たちが開催したトークイベントの様子などの書き下ろしを加え、再構成したものだ。

 メインとなるオタク女子インタビューでは、仕事とシュミを切り分けることにした銀行員や看護師女子から、仕事でもシュミを生かせる漫画編集者や芸能マネージャー女子まで、十人十色の「シュミと仕事」への考え方が深掘りされていく。続く章では、働く女性たち約1700人へのアンケートで聞こえてきた「仕事で嫌なことがあっても『これが次の現場への資金になる』と考える」「有給休暇をフルに使って現場に行くため、健康に過ごす」などの“お仕事”と“推し事”両立のコツや、トークイベントに登壇したキャリアカウンセラーの西尾理子さんによる、オタ女子キャリアお悩み相談も収録。

 キャリアカウンセラーの西尾さんは言う。

実はキャリアの語源は「わだち」──馬車が通ったあとにできる車輪の跡のことなんです(中略)。そしてそこには職場内で出した業務上の成果だけでなく、仕事に向き合う姿勢や、仕事以外の人生との関わり、その時々で変わっていくライフスタイルなど、あなた自身の「在り方」もすべて含まれているはずです。つまり、仕事以外の生き方も含めてキャリアなのです。

 すなわち、「推しを推す」という履歴書にはどうにも書きにくい生き様こそが、私たちオタクが強みにすべき“キャリア”だというのだ。なんて心強い発想!

 そして、本書の内容を受け、劇団雌猫のみなさんはこう書いている。

終身雇用が崩壊し、しかし高齢になっても働き続けなければならない世の中。明るくないニュースも多い今日この頃だからこそ、「生き方」のうち自分で決められる部分が大切なのだと思います。

 オタク女子はもちろん、子育て中で“我が子最推し”の人にも、介護や病気療養といった高難易度クエストに挑戦中の人にも、きっと参考になる“お金”と“時間”のやりくり術が詰まった1冊。隣の女子の生き様に、ヒントと元気をもらえます。

文=三田ゆき