公共の場で開くと罰ゲーム状態に…! SNSを席巻した、超ストレートな“笑いの爆薬”

文芸・カルチャー

公開日:2019/8/16

『#どれだけのミスをしたかを競うミス日本コンテスト』(水餃子のカンパネラ:編集/KADOKAWA)

 この春にTwitter上で旋風を巻き起こしたハッシュタグ「#どれだけのミスをしたかを競うミス日本コンテスト」が書籍化された。無数の投稿から厳選したというだけあって、相当に「笑える」本に仕上がっている。はっきり言って笑いすぎてツラい。この超ストレートなおかしみは、各方面で狭苦しい感のある昨今にあって、何かの突破口になるかもしれないと思わせるものだ。

何かと思えば「笑えるミスの集大成」だった

 ハッシュタグがそのまま書名になった本書。どんなハッシュタグなのかといえば、要するに「やらかしたミスのお披露目大会」だ。今年の3月に発案者(本書の編者を兼ねている)が遊びのつもりで作ったところ一気に広まり、すぐに「電車で読んではいけない」という定評を得た。本書収録のミス「『ナゲットのソースはマスターソードでよろしかったですか?』と勝手に客を勇者にした」などを読めばそれも納得。吹き出してしまうので公共の場で開くと本当に罰ゲーム状態になってしまう。

「働く」「くらし・家族」など4部門・計150超のミスを収録。

 続けて本書収録エピソードをいくつか拾ってみよう(いずれも要約)。「一人で来店したお客に『お会計はご一緒でよろしいですか?』と言ってしまい、軽いホラーを味わわせた」「バイト中『馬刺しまだ?』と言われて『今解凍してます』と返答」「ファミレス店員、『クロタさん』を『ワロタさん』と誤読」など、“やっちまった感”あふれるミスのオンパレードだ。結局のところ他人のミスほど超ストレートにオカシイものはないのだから、収録ミス(150本以上)のすべてが“笑いの爆薬”といってもいい。

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ただ笑って、少しだけ元気になれる

 人気ハッシュタグなのでまとめサイトも多々作られているが、本書は単に「いいね」の数によるのではなく、純粋におもしろいツイートを集めるという観点で編集されているようで、ミスの並びもスムーズで読みやすく、ゲラゲラ笑ってあっという間に読了。にもかかわらず、数日後に再び手に取って2巡目に入ったのは、「ただ笑う」だけの時間を心身ともに欲していたせいかも。「医師に『座薬挿れましょう』と言われて『恥ずかしいので自分で挿れます』と言ったら『当たり前です』と言われた」「小学生の頃、『告げ口してやるぞ』と言おうとして『口付けしてやるぞ』と言った」…。無心でページを繰るだけで、心が健康を取り戻していく。

我が身に心当たりのあるミスが見つかるかも。

 思えば日常生活から政治経済まで、どうも狭苦しくてみんなケンカや言い合いばっかりしているように感じられる昨今、小さなミスのなんと温かく、懐かしく、くだらない(ほめている)ものであることか。「私たち、こういう存在なのよねぇ」と思えて、少なからず安心して少しだけ元気になった。深くはないが、浅くもない。くだらないけど、心に響く。そういう“あってもよいモノ”としてのミスカタログ。今の日本で一番必要とされているのは、こういう本なのかもしれない。

文=森町ユウタ