手取り10万、30連勤、終電でも帰れない。超絶ブラック企業に勤めるOLがウルトラホワイト企業に転生したら!?

マンガ・アニメ

2019/8/22

『社畜が異世界に飛ばされたと思ったらホワイト企業だった』(結城鹿介:原作、髭乃慎士:作画/KADOKAWA)

 近年、ニュースや日常生活の中で“働き方”や“ブラック企業”が話題に上ることが多くなった。その理由は、やはり“働き方改革”だろう。そして、マンガや小説といったフィクションの世界でも、“働く”を題材にした作品が増えている。本稿で紹介する『社畜が異世界に飛ばされたと思ったらホワイト企業だった』(結城鹿介:原作、髭乃慎士:作画/KADOKAWA)は、そんな作品のひとつだ。

 ブラック企業で働く3年目のOL・かすみは、過酷な労働環境に心身ともに疲れ果てていた。毎日定時よりも3時間前に出社し、早くて終電、間に合わなければ会社に泊まる。求人票に「当社カレンダーによる」と書かれていた休日は、ほとんどもらえない。すでに、連勤の数は30に達していた。そして、肝心の残業代は支払われず、手取りは諸々引かれて約10万円…。それでも「半人前だからもらえるだけでありがたい」――そう、思い込んでいた。

 ある日、30連勤中の彼女は、流れ星に撃たれる…。気が付くと、そこは“異世界”――ではなく、業界シェアNo.1のホワイト企業・ホワイト製作所。前職と比べるとまるで“異世界”であるホワイト製作所は、基本的に定時帰り、週休2日、そして残業代もきっちり受け取ることができる。ブラック企業のやり方が当たり前だったかすみは、あまりのホワイトぶりに慌てふためく。本作のいちばんの魅力は、前職とのギャップに“カルチャーショック”を受ける、健気でかわいいかすみの姿にあるだろう。

 今回発売された2巻では、次々と明らかになるホワイト製作所の福利厚生に加え、かすみに新たな刺客が現れる。それは、さらなるホワイト企業――エレガント電工から転職してきた菅井柳子(すごい やなこ)だ。「やなちゃん」と呼ばれる彼女は、お昼休みの後に「シエスタ(食後のお昼寝)」を要求するほどのホワイト志向。ブラック育ちのかすみは、その言動に衝撃を受け、気絶して医務室に運ばれてしまう…(かすみのリアクションは、いちいち派手)。だが、ここでひとつ疑問が残る。どうして、やなちゃんは、超絶ホワイトなエレガント電工を辞めたのか。その秘密を知れば、やなちゃんをただの“やなこ”だとは思えなくなるはずだ。

 やや現実離れしたホワイト&ブラックネタで楽しませてくれる本作は、ときたまチクりと現実の私たちを刺してくる。例えば、友人と仕事について話しているとき、かすみが呟いたひとこと。

「私はお仕事が好きか嫌いか考えたことがないなあ…」

 ブラック企業で仕事をこなすことだけに必死になっていたかすみは、その仕事が好きか嫌いか、そして自分が何をしたいのかを考える余裕がなかった。世の中は、ブラックな企業を叩き、ホワイトな企業を持ち上げる。だが、仕事の本質はそこにはない。ブラックからホワイトに“転生”したかすみが、きちんと“働く”ことに向き合ったとき、どんな答えをつかむのか。笑えるコメディ作品に、そんなテーマも期待している。

文=中川凌