団地の世界は摩訶不思議…子どもも大人も楽しめる「パンツの持ち主」探しの大冒険絵本

文芸・カルチャー

公開日:2019/8/31

『だれのパンツ?』(シゲリカツヒコ/KADOKAWA)

 冒険は日常の中にこそ眠っています。いつも通りの道から少し外れただけで、私たちはまだ見ぬ世界へ繰り出すことができるのです。『だれのパンツ?』(シゲリカツヒコ/KADOKAWA)は、大人も子どもと一緒に楽しめちゃう絵本作品。日常から一歩外れて、子どもと一緒に冒険の旅に出かけることができる1冊です。

 主人公・タロウは、団地の前の公園に寄り道するのが、いつものお決まりのコース。今日もいつも通りに遊んでいると、頭に大きな影がふってきました。

「……っと、なんだあ!?」

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 なんとタロウの頭の上におちてきたのは、おおきなヒョウ柄のパンツ。

「おーい、こっちこっち」

 そして、上の方から野太い声が聞こえてきます。見上げてみると、団地の3階のベランダに似たような洗濯物が干してあるではありませんか。タロウは、パンツを届けてあげようと、階段をかけあがります。ですが、持ち主はなかなか見つかりません。タロウは団地の住人たちの証言をもとに、いろんな部屋をつぎつぎ訪ね歩いていきますが、上へ上へと進むうち、なんだかだんだん団地の様子がおかしくなってきて!? 団地の階段の先は、思いもよらない冒険の世界へとつながっていたのです!

 本作は、イラストがとってもリアル。細部までとことん描写されているため、絵本の中に引き込まれていくようです。物語は日常だけを描き出したものではありません。ユーモアたっぷりの展開に子どもも大人も驚かされることでしょう。

 階段を進めば進むほど、この団地は姿を変えていきます。4階建てであったはずなのに、さらに上の世界が登場。ぐにゃぐにゃとゆがんだ廊下に、ずらりと並んだおかしな形の個性的なドア。住人も黄色の絵ばかり描いているおかしな画家に、部屋の中で大きな牛を飼っている闘牛士、さらには、ゴリラの親子やクモ、カメレオンまで登場!? タロウはいつもの団地とはまったく違う摩訶不思議な世界を冒険することになるのです。

 タロウの冒険を見守っていると、「次はどんな部屋だろう」と、大人も子どももワクワクされられるに違いありません。イラストには、さがし絵要素も満載。各ページにおはなしの続きがわかるヒントが隠されています。パンツの模様に隠されたヒントを探しながら、次のページを読むのがまた楽しい。読めば読むほど新しい発見に満ちあふれている、何度読んでも楽しい作品なのです。

「おおきなヒョウ柄のパンツ」といえば、「持ち主はあの人では?」と誰もが予想できるでしょう。ですが、このパンツには、そんな期待を裏切る、まさか秘密が隠されていて…。奇想天外な展開と圧倒的な絵の描写に、子どもも大人も夢中になること間違いなし。

 さぁ、あなたもタロウと一緒に冒険の旅に出かけてみませんか。日常から一歩外れた世界にこそ、大きな冒険が待ち受けているのです。

文=アサトーミナミ

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