つらい、新学期前に逃げたい、もう死にたい…そう考えるあなたに寄り添う「味方」になるメッセージ

暮らし

公開日:2019/9/8

『#8月31日の夜に。(生きるのがつらい10代のあなたへ)』(NHK「ハートネットTV」:編、note:協力/毎日新聞出版)

 かつて8月31日の夜に、明日から学校に行かなければならないプレッシャーと行きたくないという気持ちの狭間で、自宅の窓から飛び降りようかと真剣に考えたことがある。時計の針が進むたびに明日が近づいてくるように思えて、秒針も自分の命もここで止めてしまえたらいいのに…と心底願った。同級生からのいじめを受けていたあの頃の自分にとっては「学校」という場所が全てで、日常は絶望でしかなかったように思う。

 夏休みが終わる8月31日は、学校へ行くことが怖いと感じている子にとって魔の1日だ。そんな苦しい夜や新学期にかけて、やさしい味方となってくれるのが、『#8月31日の夜に。(生きるのがつらい10代のあなたへ)』(NHK「ハートネットTV」:編、note:協力/毎日新聞出版)という1冊だ。

 本書には同テレビ番組のウェブサイトに寄せられた10代の日記やメディアプラットフォーム「note」に投稿されたかつての10代からのメッセージを収録。さらに、番組出演者である中川翔子さんや栗原類さんといった有名人も“あの頃の自分”を振り返り、憂鬱だった日々を乗り越える勇気を与えてくれる。

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 新学期が始まる9月1日前後には中高生の自殺がもっとも多くなるといわれている。もしかしたら、この記事を目にしている方の中にも死にたい気持ちと闘いながら必死に生きている人もいるかもしれない。でも、その「死にたい」という4文字の中には、「生きたい」「逃げたい」といったさまざまな思いがぐちゃぐちゃになって詰まっているはず。そんな言葉にできない感情に寄り添ってくれるやさしさが本書の中にある。

■「学校が全てだから…」という現役10代へ送るメッセージ

 学校に行きたくないと思う理由や行けない理由は人によってさまざまだが、どの人にも共通しているのは、そんな自分への嫌悪感じゃないだろうか。苦しい気持ちを内に抱え込んでしまうのも、「学校に行きたくない」という気持ちを言葉や行動でストレートに表すことが難しいからだろう。実際に、筆者もいじめを受けていた時にそのことを誰にも話せなかったが、「別に傷ついてなんかいない」とごまかした自分の心はパンパンになった通学カバンよりも重く感じられた。

 大人になってみると学校という世界の狭さに気づくこともできるが、10代の頃の自分にはとてもそうは思えず、そこから逃げだす勇気もなかった。だからこそ、自分と同じような気持ちを抱えている人にぜひ読んでもらいたいメッセージがある。

“逃げてもいいよ。逃げたほうがいいよ。そしてもうわかってると思うけど、どこまで逃げても、たぶん逃げきれないよ。また同じ場所に、連れ戻されるんだよ。でも、たいせつなのは逃げることじゃないんだ。「逃げかた」を、おぼえることなんだ。一度「逃げかた」をおぼえてしまえば、どこにだって自分の居場所はつくれるから。”

 これは『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の著者でもある古賀史健さんが、自身のいじめ体験を振り返り、現役の10代に送るメッセージ。

 最近は「無理をしてまで学校に通う必要はない」という風潮も強まってきているが、逃げることにためらいを覚えたり、周りの大人が逃げることを許してくれなかったりすることもまだまだ多い。かりに逃げることができても、また同じような状況に陥ってしまったら…という不安もあるかもしれない。でも、逃げ方を覚えることができたら、学校という閉塞的な場所以外にも居場所が見つけられるようになるだろうし、「死」を願うこともなくなるかもしれない。

 人の心は自分が思っているよりも脆い。「もう少し頑張ろう」は「もう頑張れない」と背中合わせであることもきっと多い。今年もまた10代の自殺がメディアで取り上げられ、誰に責任が? と追及がなされるかもしれない。しかし、いじめを受けている人が知りたいのは、そんなことじゃない。どうすれば地獄のような毎日から抜けだせるかということ。「助けて」の声が出せず、迎えたくない明日に怯えてきたあなたにとっては、この本がまた立派な新しい居場所になるはずだ。

 俗にいう「普通」とか「一般」のレールから外れたとしても、あなたには本気で笑えて、自分や人の命を大切だと思える居場所を見つけてほしい。それは、いじめ被害者であった筆者が現役の10代に今送りたい、たったひとつの願いだ。

文=古川諭香