令和でも妖怪たちは大人気! その不思議な能力を科学で解き明かせるか?

スポーツ・科学

2019/9/15

『妖怪 空想科学読本』(柳田理科雄:著、黒城ろこ:漫画/PHP研究所)

 昭和から平成にかけて、夏になると心霊現象や妖怪など「怪異」を取り扱う番組が各局で競って放送されていたが、昨今ではめっきり減ってしまった。以前読んだニュース記事によると、事実か否かの検証が出来ないためにコンプライアンス上、企画が通りにくくなっているとのこと。しかし、今でも「妖怪」という不思議なキャラクターたちは、子供たちの心をつかんでいるようで、この夏も妖怪に関する1冊が登場した。

『妖怪 空想科学読本』(柳田理科雄:著、黒城ろこ:漫画/PHP研究所)はそんな妖怪たちを実在する生物と仮定して、その能力を科学の目で解き明かすもの。妖怪伝承は全国各地に存在するが、本書は有名であろう27体+1体を厳選して検証。その中から小生が個人的に気になる項目を紹介したい。

 まず気になったのは「人魂」である。ポピュラーではあるが、大抵のフィクションでは、妖怪が現れる前触れといった扱いで、それ自体は大した存在ではない。だが、多くの目撃談があり読者にもイメージしやすいのではないだろうか。もしかしたら、目撃経験もあるのでは? 実は小生も一度だけ、夜の墓場で見たことがある。少し離れた植え込みから、青白い光の玉がヒョロヒョロと打ち上げ花火のように2mほど昇り、落ちるかのように消えていった。

 目撃情報が多い分、意外と人魂は科学的に様々なアプローチがされており、妖怪を科学的に考察する本書にはピッタリの題材ではないか。昭和の頃は「死んだ人の体から出たリンが燃えている、だから人魂は墓場に出る」と言われていたが、本書では否定。確かに人骨にはリン酸カルシウムが含まれているが、自然発火はしないからだ。他にも「沼から発生したメタンが燃えている」という説では、その発火点が537℃とのことで、これも自然発火はあり得ない。

 そういえば、本書では触れられていないが平成には「プラズマ説」も話題となり、それを支持する声も多い。ただ、これも決定打とはいかなかったようで、結局のところ明治大学理工学部兼任講師でもある著者が、いくら調べても人魂の正体は分からず、謎は深まるばかりだった…。

 しかし、人魂は実体験しても、全く怖さが足りない。なら本書で一番怖い妖怪はなんだろうか。これも個人的経験則でいえば「口裂け女」だ。1970年代に岐阜県から発生した都市伝説で、当時はその目撃情報にパトカーまで出動したほど。その頃は愛知県在住の5歳児だった小生も、非常に怖かった覚えがある。岐阜県は隣同士であり、いつ近所で出会うのかと心配していたのだ。

 マスクをかけ赤い服を着た美女が薄暗い道端に立っている。そこを通りすがる人に「私、キレイ…?」とたずねてくるのだが「キレイです」と答えると、「これでも…」と言いながらマスクを外すとそこには耳まで裂けた口が現れる。そして「お前も同じようにしてやる」とハサミで被害者の口を切り裂くというのが基本的なパターンだ。なお「キレイじゃない」と答えれば問答無用で殺され、質問に答えず逃げ出しても、100m3秒の超俊足で追いかけてくるから、とても逃げ切れない。

 この脚力はジャンプ力にも影響するらしく、著者が高校生の垂直跳びと50m走のタイムを比較したところ、走る速度の1/2が離陸速度であったという。口裂け女が秒速33.3mで走れるなら秒速16.7mで跳躍可能で、その到達高度は14mになり、これはビルの5階までの高さに匹敵する。当時の小生がそれを知ったら、もっと怖がっていたはず。その頃の自宅は、マンションの4階だったから…。

 本書を読み終わると、確かに妖怪たちの能力はすごいと分かる。だがこれらは、あくまで実在したらとの仮定でしかないので安心してほしい。いや、でも、口裂け女って整髪料のポマードを嫌うって話だったな。買っておこうかな…。

文=犬山しんのすけ