「私は大丈夫」という人ほど騙されてしまう本当の理由。洗脳コントロールは身近な危険?

暮らし

2019/9/22

『なぜ、人は操られ支配されるのか』(西田公昭/さくら舎)

 あなたは日常の中で誰かから心を支配されてはいないだろうか? こんな質問を投げかけるとおそらく多くの人は「私は大丈夫」と答えるはず。だが、本当にそうだと言い切れるだろうか…。

□ 日々、上司からの厳しい叱咤や追及に耐えている
□ リーダー格のママ友のためにスケジュールを確保している
□ 夫の望むように行動をしている

 もし、これらの行動に心当たりがあるのなら、それはあなたの心が支配されているというひとつのサインだ。

「支配」という言葉を聞くと、少々オーバーに感じられるかもしれない。だが、日常の中で行われている小さな「支配」も、パワハラやモラハラ、あるいはカルト集団の洗脳といった大事件も根本は同じだ。人の心は自分が思っているよりももろいため、支配されたり操られたりしてしまう危険性は誰にでもあるのだ。

 それなのに私たちはなぜか、「自分だけは大丈夫」と思い込んでいる。『なぜ、人は操られ支配されるのか』(西田公昭/さくら舎)は、そういった油断だらけの危うい心に注意喚起を促す1冊だ。

■人は「線引き」を好むもの。だから支配される!

 心理学者の著者・西田氏によれば、私たちが「支配する/される」の関係に陥ってしまう根本的原因は、人間が「線引き」を好む生き物であるからだという。たとえば、血液型占いで会話が盛り上がるのも、実はこの心理が大きく関係している。

 人は何かの集団に分類されると安心するし、自分が属さない「外集団」を敵とみなして差別することで結束を強める。この原理は、学校や職場でいじめが起こる理由にもつながるという。

 そして、人間は自分が属する「内集団」の意見に賛同し続けていると、自分で物事を考え判断することを放棄してしまう。そうすると、邪悪なものが近づいてきても察知できなくなり、マインドコントロールされる危険性が高くなるのだ。

 支配は自由を奪い、人を縛る。誰かに心を支配されないためにはまず、マインドコントロールのからくりを知ることも大切だ。

■誠実な人ほど操られてしまう“支配のからくり”とは?

「私はもともと疑り深いから大丈夫」――そう自信を持って言える人も多いかもしれない。しかし本書によると、実は悪徳商法やカルトに一番騙されやすいのが、このタイプ。疑り深いからこそ、いったん話を聞き始めると深入りしてしまい、怖くて逃げられなくなってしまうため、相手の巧みな言葉に翻弄されるハメになりやすいのだという。

 また、「何も信じない」というタイプの人も危険だ。このタイプの人はいわば「信じない」というグループに属しているため、内集団の決まった思考に陥りがちだ。そのため、支配しようとする側は、家族や友人から物理的に引き離したり、自分の考えを議論する習慣を奪ったりして、意思決定をコントロールしようとするのだ。

 そして、「誠実な人」ほどマインドコントロールされやすいのも事実だと西田氏は語る。誠実な人は決めた約束を守り、相手の気持ちに真面目に応えようとするため、操られてしまいやすい。たとえば、契約書にサインをさせられそうになって、「印鑑を持っていないから…」と逃げたつもりでも、相手から「次回でいいですよ」と言われると、うっかり次に会う約束をしてしまうのだという。

 では、自分の心を支配されないためにはどうしたらいいのか。その答えは本書に詳しく記されている。本書では、人の心を操る「支配のテクニック」や、過去にオウム真理教、尼崎連続変死事件のような重大事件が起きた背景の心理学的分析も解説。被告の鑑定人としてどちらの事件にも携わった著者だからこそ明かせる「支配の実態」を知れば、「自分はきっと大丈夫」が過信であるとイヤでも気づくはずだ。

 現代は、ネット上の意見を鵜呑みにしたりSNSの反応を過剰に気にしたりする人が多く、いわば「自己判断をしなくても生きられる時代」でもある。だが、これは支配される危険性が高まっているということ。危うい社会の中で生きている私たちは、他人に自分を任せないよう常に意識していかねばならない。

文=古川諭香