疎遠になった過去の友達「元トモ」との黒歴史が笑えない…メンタルに突き刺さるせつない体験談

エンタメ

2019/9/29

『拝啓 元トモ様』(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」&「アフター6ジャンクション」:編/筑摩書房)

「せつない」「記憶のフタが爆発した」…誰もが思い当たるフシがあるであろう「元トモ(友達)」をめぐる体験談を数々収録した、『拝啓 元トモ様』(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」&「アフター6ジャンクション」:編/筑摩書房)が発売中だ。

 本書は、ラジオ番組の人気コーナー「疎遠になった友達~元トモ~」の投稿を書籍化したもので、ライムスター宇多丸、宇垣美里、しまおまほ、池澤春菜ら出演者の「元トモ」をめぐるエッセイも楽しめる。

 宇多丸氏は、1969年東京都生まれ、早稲田大学卒。ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパーであり、ラジオパーソナリティとしても活躍中だ。

 スタート当初は、「疎遠になった友達」にまつわる黒歴史を軽く笑い飛ばそうという企画だった本コーナーだが、黒歴史はヘビーな余韻を残すものも多く、宇多丸氏やゲストにとっても他人事ではいられないトピックが満載だったそう。

 今ならSNSを使えば旧友の消息を探ることはできるし、ちょっと勇気があれば連絡をとることもできる。でも今さら連絡をとったところでなぁ…という感情がふつふつとわく「元トモ」とは、ある意味、元カノよりもっと微妙な距離にある存在だ。番組を仕切ってきた宇多丸氏が、「文章がめちゃくちゃうまい」と称賛する56編のストーリーは、ぐっとくる話やせつないかぎりの話など、心揺さぶられるものばかりだ。

【男性(33歳)の投稿】
小学校から高校まで親友で、とても影響を受けたT君。大学進学のタイミングで離ればなれに。今はT君なしでも充実した日々を送っているけれど、僕が好きになるものは、いまだにT君が好きそうなもの。

宇多丸氏のコメント
「14歳の魂は永遠。いいタイミングでいい友だちに出会えたと思いますよ」

【男性(37歳)の投稿】
互いの家に泊まり合うほど親しかった友達。就職し、友達が彼女と一緒に暮らし始めたことで疎遠に。ぽっかり穴が開いた気持ちからMを恨んだこともあったが、自分も結婚し、Mの気持ちがわかるようになり、今は年に一度会うか、という関係になっている。

宇多丸氏のコメント
「お互い人生が引き返せないところまで行ってみると、意外と許せることも増えていくもんね。30も半ばを超えてくると」

宇垣氏のコメント
「一歩踏み出したら動き出す時間というのもあるんですねぇ」「人生、いつ元トモになるかわからんものですな」

 宇多丸氏はこうも語っている。

“人間というものが、絶えず変わってゆく存在であるかぎり、人との関わり方も必然、常に変化・変質してゆかざるを得ない。その意味で、本書に収められた「元トモ」をめぐる物語とは、誰もが大なり小なり必ず経験する、一種の成長プロセスなのではないでしょうか”

“無数の取捨選択の果てにある、我々の「この人生」のかけがえなさを、あらためて際立てもする。毎読後に訪れる、胸をえぐるような感覚は、ひょっとすると生の豊かさそのもの、なのかもしれません”

 本書に収められているのは人の体験談だが、凝縮され輝いていた自分の「元トモ」との時間を胸中に思い起こし、人生の深さや豊かさについても味わえる1冊だ。

文=泉ゆりこ