あの作品のあの科学っぽいシーンの謎! タイムトラベルは自殺行為? SF要素のネタ帳『シナリオのためのSF事典』

スポーツ・科学

2019/10/29

『シナリオのためのSF事典』(森瀬繚:編著、長谷敏司・宮本道人:協力/SBクリエイティブ)

 バトル漫画やSF映画で、よく見かける科学っぽい現象がある。タイムトラベルとか人工知能とか。古代文明とか不老不死とか。ロボットとか宇宙とか。ゴムゴムは…ちょっと違うか。とにかく挙げればキリがない。

 最近の漫画のトレンドは「異世界転生」(だと勝手に思っている)。これもまたSF要素の1つだ。主人公が異世界に通じる空間を通り抜け、地球とは違う秩序や文化が形成される世界で、超人的な能力を発揮して無双するわけだ。

 つまり科学っぽい現象が物語のよいスパイスとなり、読者をより興奮させている。科学は空想を加速させるのだ。だからこそSF作品が大好きな人は科学の知識を得ると、もっと作品を楽しめるのではないか。

『シナリオのためのSF事典』(森瀬繚:編著、長谷敏司・宮本道人:協力/SBクリエイティブ)は、主に漫画や映画などの制作者のための書籍。物語をつむぐために知っておきたい科学の基礎知識を120のテーマに分けて解説する。

 たとえばバトル作品で頻出の攻撃技「ビーム光線」。そもそもビームとは、指向性のエネルギーを照射することだ。「電磁波」「粒子」「音波」の3種類に分けられ、「電磁波」にあたるレーザービームは光速で飛来し、目標をあっという間に蒸発させる。これぞ誰もが知る最強の攻撃技…なのだが、工夫なく照射すると進路が曲がってしまう弱点もある(難しいので理論は割愛)。

 一方、電子・陽子・重イオンなどを飛ばす「荷電粒子砲」は、現実で実用化の研究が進んでいるらしい。なんと夢のある話だ! と興奮するが…問題も多い。まず巨大な装置と莫大なエネルギーを必要とする。さらに大気などの障害物で威力が安定しないので、惑星上で運用するには難点がある。

 このような事実があるためフィクションの世界でビーム光線を描く場合、『機動戦士ガンダム』の「ミノフスキー粒子」のように、架空の粒子や物理法則を設定する作品もあるそうだ。うーん…ひとくちにビームといってもなかなか奥が深い。今度ビーム光線が登場する作品に出会ったら、どのような設定をしているのがじっくり読んでみよう。

 SF作品だけでなく、人類の夢として誰もが一度は妄想するタイムトラベル。こちらも実に興味深い。まず主人公がタイムトラベルをする際、時間だけを移動して、主人公が立っていた場所は移動しない場合、大変なことが起きる。なんと主人公が宇宙空間に投げ出されてしまうのだ(理論は割愛)。そんな…タイムトラベルの意味がない。

 百歩譲って、主人公が時間と場所を一緒に抱えて移動したとしても、今度はもっと大変なことが起きる。移動先に存在していた物体と分子レベルで融合してしまうのだ。自殺行為じゃないか恐ろしい…。ドラえもんはいったいどうやってタイムマシンを運用しているのだろう? 『時をかける少女』の紺野真琴は、どうやって分子レベルで融合した体を修復していたのだろう? ん~…妄想が止まらない。

 本書は制作者のために科学の基礎知識を分かりやすく解説する本だ。「あの作品のあの科学っぽいシーンは、どのように設定されていたっけ?」というように、思わず好きな作品を見直して、アレコレ深く考察するきっかけを与えてくれる。

 私の場合は本書を読んで『炎炎ノ消防隊』を読み直すことに決めた。主人公のシンラが弟のショウと対決するシーンで、あの変な科学者が「物質が光速で移動すると~」と言うセリフをもう一度読み直したい。

 科学は空想を加速させる。本書は実に興味深い1冊だった。

文=いのうえゆきひろ