7億円金塊強奪犯と宮迫氏の関係は? 半グレ&パリピ人生を謳歌した主犯格が語る

社会

2019/11/20

『半グレと金塊 博多7億円金塊強奪事件「主犯」の告白』(野口和樹/宝島社)

 今年大いに世間を騒がせ、流行語大賞の候補にもノミネートされた言葉のひとつ「闇営業」。

 現在、芸能活動を事実上謹慎状態にある「雨上がり決死隊」宮迫博之氏にとって、本書は吉と出るのか、はたまた…。そんな関心もあってか、巷の話題になっている1冊が、著者と宮迫氏との「ギャラ飲み現場」も登場する『半グレと金塊 博多7億円金塊強奪事件「主犯」の告白』(野口和樹/宝島社)だ。

 本書は、2016年7月8日に発生した「博多7億円金塊強奪事件」の主犯格として、2017年5月に逮捕され、窃盗罪で「懲役9年の実刑」が言い渡された(2019年9月17日、二審、福岡高裁)、野口和樹被告(44)による手記である。

■華麗なイベントのプロデュース業にも関わってきたパリピ人生

 生い立ちや、中学生時代から始まった著者の半グレ人生を振り返る回想録のパートでは、これまでに手を染めてきた数々の裏稼業(車の窃盗転売、覚せい剤の売人)の他、30代で立ち上げた実業(建設業、イベント・プロデュース業)にも触れている。

 起業した建設会社は、ゼネコンから仕事を受注できるほど成長させたという。また、パリピを自認する著者は、日本屈指のダンスミュージックイベント「ULTRA JAPAN」や、今年2月に六本木にオープンしたクラブ「SEL OCTAGON TOKYO」(運営はエイベックス)が、まだ構想段階だった頃に関わりがあったという。しかし、半グレという素性がわかると、関係者たちからは疎まれるようになったそうだ。

 本書の中盤からはメインテーマである、「博多7億円金塊強奪事件」の背景や経緯などが詳細に明かされていく。そして、事件の背後に暗躍する、金塊密輸シンジケートや巨額詐欺グループの存在、さらには逮捕・起訴・裁判の過程で経験した、警察や司法の実態などを告発している。

■「7億円金塊強奪事件」にはシナリオがあった!?

 著者によれば、金塊強奪はそもそも“出来レース”だったといい、「脱税したい人物がいる。金塊強奪役を演じてほしい。報酬は奪った金塊の半分。警察に被害届は出さない」という条件の依頼仕事だったという。

 そこで著者は計6人のメンバーで金塊強奪を実行する。本書にはその様子が詳細に再現されているが、著者たちは難なく合計160kgの金塊を手にする。ここまではシナリオ通りだった。

 しかし、金塊を手にした著者たちは、筋書きを変えてしまう。依頼者に半分(80kg)を戻すという約束を破って60kg分しか戻さず、残りの金塊を自分たちの取り分にしてしまう。さらに、現場から間違って奪った個人のバッグも返さず、中に入っていた現金120万円は山分けし、携帯電話を捨てるなどの行為にも及ぶ。こうした行為が後々、窃盗罪へとつながっていくことになる。

 本書では著者がヤクザ組織に入らない理由をいくつかあげているが、「やりたいことを自由にやりたい」というのがそのひとつだという。大金の絡むシノギ(裏稼業)であろうと、「相手が文句を言ってきたらケンカすればいい」と、“その場のノリ”で約束を反故にするあたりが、組織としての体面を重んじるヤクザと、彼ら半グレグループの違いなのかもしれない。

■写真が原因で宮迫氏が芸能界を引退するのは間違っている…

 その後、著者たちは金塊を数日に分けて現金化する。2016年7月27日、すべての金塊を換金し終えると、合計で4億数千万円になったという。

 そしてこの日の夜、著者たちは大阪・北新地の某キャバクラへと繰り出し、いわば祝勝会に興じる。その店にたまたま居合わせたのが、客として来ていた宮迫氏だった。

 写真撮影に至った経緯を著者は、「宮迫氏の方からテーブルに挨拶をしに来たので、高級シャンパンで乾杯して記念撮影をした。ただそれだけのことだ」と記す。

 金銭の授受については、「私から何かを話すことは控えたい」と口を濁すも、深い関係は何もないとしたうえで「私との写真が原因で、(宮迫氏が)芸能界からの引退を余儀なくされるのであれば、それは間違っている」と記し、こう続けている。

“ここまで語ってきたように、私の人生はまさに「悪の履歴書だ」。だが、自分のせいで、罪を犯したわけでもない、他人の人生が狂わされるのを見るのは辛すぎる”

 2017年5月、著者たちは逮捕される。「K氏」として登場する金塊の所有者、つまり出来レース仕事の依頼者もまた、約束を反故にして、警察に被害届を出したのだ。

 著者によれば、このK氏こそが、数件の未解決巨額詐欺事件と金塊密輸シンジケートの首謀者で、逮捕すべき人物らしい。しかし、検察尋問は受けたものの、K氏やその手下たちは無罪放免。著者たちだけが有罪となり結審する。

 本書には、刑事や検察、裁判官らとのやり取りも詳細に書かれている。そこには違和感がある部分も多い。ただ、この事件の全貌解明には、著者が罪を償い、警察や司法に対して、意見が主張できる立場にまず立つことが不可欠だろう。

 実業も順調だったというが、裏稼業もやめられなかった半グレ人生。振り返れば、得たものは「後悔しかない」と記す著者。今後の新たな人生では、実業での才能だけを生かし、社会をよりよくするために奮起してくれることを期待したい。

文=町田光