コラーゲンで肌プルプル?…飛び交うウソ情報にハマりやすいタイプとは?

健康・美容

更新日:2019/11/23

『“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!』(桑満おさむ/育鵬社:発行、扶桑社:発売)

 よく混同されがちだが、「正義」と「正義の味方」は違う。「月光仮面」の原作者としても有名な川内康範は、作品内のヒーローが正義そのものではなく代行者であることにこだわったと伝えられる。そしてまた、「意識が高い」人と「意識高い“系”」の人も大きく異なり、後者の人々が悪の手先となってしまうこともある。

 そんな彼らのことも慈悲をもって救い、多くの人々の命と心と財布を護るため、ニセ医学と闘う現役の医師がいる。その人が、“ニセ医学バスター”にして『“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!』(桑満おさむ/育鵬社:発行、扶桑社:発売)の著者だ。

■ニセの医学情報にハマりやすいのはどんな人?

 ニセ医学とは、文字通り「偽物の医学」のことで、著者は「ニセ医学には科学的根拠がありません」と定義する。だからといって、それら全てを悪と決めつけているわけではない。著者自身も「おばあちゃんの知恵袋的なものは大好き」と述べ、そもそもニセ医学について調べ始めたのは「おもしろいネタ」を探す程度の気持ちで、とんでもない情報を目にして笑って楽しんだこともあったようだ。そんな著者が対峙する相手は、営利目的であったり人々に拡める講演活動をしていたりする者たちであり、その相手には科学的根拠を問い質して立ち向かう。

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 一方、ニセ医学に「ハマりやすい人」の特徴は、本書のタイトルにもある「意識高い“系”」の人たちだという。常に向上心や責任感を持ち本当の努力をする「意識が高い」人は、ここには含まれない。

 著者によれば、意識高い系の人たちは「能力が低いほど自分を過大評価する」という認知バイアス「ダニング=クルーガー効果」が強く働いている場合が多いそうだ。また、「自分が信じるものを否定するような情報を出されると、信じていたものを疑うのではなく、むしろ信じる気持ちを強めてしまう」という「バックファイヤ効果」によって、ますますニセ医学から抜け出せなくなってしまうという。

「(本当に)意識が高い」人に憧れて自分も目指すことは、悪いことではない。しかし「意識高い“系”」の人がやっかいなのは、完璧を目指すあまり、「周囲も同調させようとする」ところにあるという。

 本書で取り上げられているニセ医学の例のなかでも、「コラーゲンでお肌プルプル」といった情報ならば、被害は信じた人の財布程度で済むが、「合成添加物は毒」「原発事故で甲状腺がんが増える」「反ワクチン・反予防接種」といったテーマになると、人々の生活を脅かし、さらに誤情報によって被害者が出る可能性すらある。

「ニセ医学の情報は、恐怖心をあおるのがうまい」という。不安を感じる人を精神的に追い込み、医学的に有効な正しい手段すら避けるようになるからだ。とりわけ「〇〇でがんが治る」とするものを、著者は「最悪のニセ医学」と断じている。

■正しい医学情報をきちんと見分けるコツは?

 本書の巻末には、ニセ医学情報でよく使われるフレーズや特徴を列挙した【ニセ医学にダマされないための七箇条】が記してある。「海外では当たり前。日本は遅れている」といったフレーズや「難しい言葉を使ったもっともらしい説明」といった記載内容を読み込んで、自分や大切な人を守る武器としてもらいたい。

 本書を読んでいる間にも、Twitterでは「血液クレンジング」というキーワードがトレンドに上がってきた。血液を一度体外に出し、オゾンを加えて戻すことにより美容と健康に良いと謳っている治療法で、名の売れている「意識高い系」の人が施術を受けたと表明したため話題になったようだ。それに対して、さっそく著者はリスクを警告する投稿を行っていた。どんなに医学が発展しようとも、世にニセ医学の種は尽きまじ。かくして、ニセ医学バスターの闘いは続くのだろう。

文=清水銀嶺