あなたが幸せに生きられる予算はいくら? 成毛眞が考えるお金を稼ぐヒント

ビジネス

2019/11/26

『金のなる人 お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方』(成毛眞/ポプラ社)

 お金持ちになりたい願望は、誰もが多かれ少なかれ抱く。お金に不安があるほどお金を渇望する。ところがそんな人々ほど、肝心な部分が抜けているのではないか。

あなたが幸せに生きられる予算はいくらですか?

 読者はこの予算を具体的に答えられるだろうか? きっと一瞬、言葉につまるはずだ。お金持ちになりたいとぼんやり思っていても、具体的なイメージができていないと、そのための行動もできない。

『金のなる人 お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方』(成毛眞/ポプラ社)は、お金との付き合い方を見直して、自分らしく幸せな人生を歩む方法を一緒に考えてくれる本だ。決してお金持ちになる方法を伝授する本ではない。著者は日本マイクロソフト株式会社の元代表取締役・成毛眞さん。幸せに生きるとは何か。お金を稼ぐとはどういうことか。本書にそのヒントを求めてみたい。

■あくまでお金は幸せな人生を生きるための予算

 お金持ちになりたいと考える人はたくさんいる。ここで改めて問いたいのは、「なぜお金持ちになりたいのか?」だ。よくある「不安だからなるべく多く稼ぎたい」や「毎日豪遊したい」という回答ならば、成毛さんの言葉を借りると「お金に対する理解が足りない」状況だ。

 まず考えるべきはゴールである。あなたにとって満足できる人生とはどんなものか。それをより具体的にイメージして、実現できる年収や資産をざっくりはじき出そう。これがなければお金を増やすことが難しく、増やしたお金を守れなくなる可能性も出てくる。

 現状、満足できる人生を送れていないから、それを実現するためにお金が必要なのだ。極端なことをいえば、「人間社会に向いていないから、地方の山里で自給自足の生活がしたい」という願望のある人に大金を届けても幸せになれない。彼に必要なのは理想的な山里と家屋であり、土地や家屋を購入した後はお金が余るばかりである。あくまでお金は、幸せな人生を生きるための予算だ。人生の目的ではない。

 なぜ自分はお金がほしくて、どれだけ足りていないのか。そのお金を用意するために、どのような手段で稼げばいいのか。このような考え方を持てば、おのずとやるべきことが見えてくる。「お金持ちになりたい」や「幸せになりたい」という人は、ぜひ「幸せに生きるための予算を稼ぎたい」という思考へ進化させよう。

■稼ぐ種はどこにでも落ちている

 それではどのようにしてお金を稼ぐべきか。本書を読んでいて興味深いのは、「いつの間にか稼ぐ」という感覚だ。私たち庶民の感覚では、お金は明日から稼ぐもの。毎日懸命に働いて、少しでも時給や月収を伸ばす方法を考える。

 しかし成毛さんはちょっと違う。お金を遊び感覚で使って、長い目で回収していくのだ。読者は今、多肉植物やサボテンの収集がアツいのをご存じだろうか? 多肉植物のコレクターが世界中にいて、「ハオルチア」という品種は、大きなものだと1鉢200万円もするという。十数年前から多肉植物を育てるのが好きだった人は、今や収入的にもウハウハだろう。

 趣味や遊びは一見、稼ぐ行為と無縁に感じる。しかし確実に知識やノウハウが蓄積されていく。それを上手に活用すれば、数年後にお金を回収することも可能なのだ。今やネットで自由に商品・サービスを販売できるし、個人のスキルや知識はYouTubeなどで幅広く公開できる。稼ぐ種はどこにでも落ちているのだ。

■将来を見据えて職種を検討しよう

「いや~…私には趣味や遊びをお金に換える方法が思いつかないな~」という人は、老後も働ける仕事を見つけておこう。たとえば読者が50歳で出版社勤めの編集者だったら、今から校閲者への道を模索すべきである。校閲者をざっくり紹介すると、その文章が正しいかどうか判断するスペシャリストのことであり、フリーランスで活躍する人も多い。素質さえあれば老後も十分に働けてしまう。反対に編集者は時流を読むスキルが必要なので、定年を超えてから仕事量を維持するのは困難だ。生き方に合わせて職種を検討するのも稼ぐコツである。

 本書を読んでいると痛感する。目先のことだけ考えてお金を稼ぐと失敗するものだ。自分のスキルで何ができるか。将来的にお金を得続ける方法は何か。いかに手持ちの武器を増やし、それがいつまで使えるか確認できた人こそ、お金を稼ぐ手段をいつの間にか手にできているものである。

■若いうちは積極的に恩を借りよう

「いつの間にか稼ぐ」という意味では、「他人から恩を借りておく」のも手段の1つだ。恩を売るのではない。借りるのだ。成毛さんは本書で、40代の頃にお偉いさんが集うイベントに出席したエピソードをつづっている。要点をかいつまむと、お偉いさんと知り合ったことをきっかけに「ご飯をおごってください」とお願いして“ご縁”を作ったという。

 ご飯をおごられたほうは忘れても、おごったほうはお金を出したので、ずっと覚えているもの。お偉いさんは成毛さんにおごったのだから、「俺の仕事を手伝ってくれ」という形で回収しようとしてくる。これが稼ぐことにつながるのだ。

 だから若いうちは積極的に相手から恩を借りておこう。いずれ相手が恩を返すチャンスを与えてくれる。反対に50代を超える人は積極的に若者に恩を売って、今のうちにご縁を築いておこう。その若者が著名になったとき、「私のおかげだ!」と声を大にして自慢できる。これも「いつの間にか稼ぐ」方法の1つだ。

 厄介にもご先祖様たちが貨幣経済を生み出したせいで、私たちはお金と上手に付き合わなければならなくなった。どんな人にとっても人生とお金はセットである。しかし必要な金額は人それぞれ。年収200万円でニコニコ幸せに暮らす人がいれば、年収3000万円でヒーヒー嘆く人もいる。

 お金を欲すれば際限がない。ならばまず自分の幸せを定めてみよう。そのあとに稼ぎ方を考えてみよう。日本経済がいよいよ怪しくなってきた今こそ、私たちはお金に対する理解を本気で深める時期にさしかかっている。

文=いのうえゆきひろ