日本三大○○に迫る! 日本が傾くレベルでやばい「日本三大悪女」は誰?

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公開日:2020/1/11

『日本人が意外と知らない日本三大○○』(もぐら/竹書房)

 日本人は「日本三大○○」が大好きだ。日本三大夜景、日本三大珍味、日本三大巨桜、日本三大花火など、挙げればキリがない。昔の人はあるジャンルの中で優れているものを3つにしぼる作業が好きだったんだなと感じる。

『日本人が意外と知らない日本三大○○』(もぐら/竹書房)は、ゆる~い漫画形式でそれを解説する。雑学として楽しむのもアリ、ネタとして誰かとワイワイ議論するのもアリ、ペラペラ本をめくると好奇心がくすぐられる。

 本書でまず目を引くのが、「日本三大悪女」だ。長い日本の歴史でTOP3に選ばれるほどの悪女なので、もう「性格が悪い」レベルじゃない。「傾国の女」、国が傾くレベルでヤバいのだ。

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 その一人である室町幕府8代将軍、足利義政の妻「日野富子」は、「日本史上の悪女は?」と問われると必ず名前が挙がる悪女だ。なぜ彼女にこの不名誉がついたのか。

 そもそも足利義政には跡継ぎがおらず、政治にも興味がなかった。そのため義政は自身の弟に将軍を継がせようとしていた。しかしその後、妻の富子が男児を産んだことで、弟と富子の間で「俺が継ぐ約束やろがいっ!」「うちの子が次の将軍でしょ!」と争う「応仁の乱」が起きてしまう。

 このあたりですでに悪女臭が漂うのだが、本当にヤバいのはここからだった。応仁の乱が起きたとき、富子は何を考えたのか味方だけでなく、敵方にも大量のお金を融資してしまう。まさか…敵に武器を買うお金を融資しただと? そんなまさか…。彼女が存在しなければ応仁の乱は起きなかったのではないか? 彼女のせいで大勢の命が消えていったのか? 考えるほど寒気が走る。

 日野富子は、金に目がくらみ「死の商人」に成り下がった、まさしく傾国の女だった。私利私欲に走る死神みたいな女である。

 このほか日本三大悪女には、源頼朝の妻「北条政子」や豊臣秀頼の母「淀殿」が選ばれている。この2人もかなりの「傾国の女」っぷりなので、ぜひ本書を読んで寒気を走らせてほしい。

 本書よりもう1つ、「日本三大酷道」もなかなかのレベルで笑えない。酷道とは、「酷い国道」を揶揄した表現だ。まず1つ目、徳島~高知間の国道439号線は、ひどい山道にある。ガードレールはなく、落ちたら命に関わる。そして道も狭く、反対から車が来たら詰む。かの弘法大師が「この峠を越えるのは、京に上るくらい辛い」と嘆いた「京柱峠」も存在する由緒ある酷道だ。

 2つ目は「死にGO」と呼ばれる三重~和歌山間の国道425号線。「転落」「死亡事故多し」という不吉な注意看板が掲げられるほど険しい山道で、一部の酷道マニアが「425号線を走破してみた」という動画をYouTubeに投稿するほど。

 そして3つ目は福井~長野間の国道418号線。この酷道は、途中から車も通れぬ山道に変わる。「ここは国道なのか? 廃道ではないのか?」と問われると、誰もが目をそらして答えに窮するだろう。

 ここで気になるのが、こんなひどい国道が存在する理由だ。なんと意外にも、国道には規格が存在しない。単に国が建設して管理している(のか?)道路を国道と呼ぶのだそうだ。

 昔から日本は水路をメインに活用しており、道路の開発が必要に迫られたのは明治時代に入ってから。国を発展させるため全国に道路を開発するべく「細く険しい道」も国道に指定した、ことはよかったが、道路の維持管理には手間と金がかかる。結果、「細く険しい道もいつか立派な道路に!」という構想は見事に破られてしまった。酷道とは、昔の人々が頑張ろうとした「夢の跡」なのである。

 だから大阪や長崎にある「一部がアーケード街になっている酷道」を笑ってはいけないし、青森にある「一部が階段になっている酷道」もありがたく感謝して登らなければならない。

 このように本書が紹介する「日本三大○○」はなかなか興味深い。「日本三大詐欺」を知ると「詐欺って昔から手口の本質は変わっていないんだな」という感想を抱くだろうし、「日本三大自殺の名所」を読むと「まさか!日本で一番自殺が多い場所はあそこ!?」と驚くだろう。

 昔の人々が日本の名所や名産などを頑張って3つにまで絞ってくれたおかげで、私たちはとても気楽に日本有数の素晴らしいものを楽しむことができる。日本三大○○を楽しむときは、まず先人たちに感謝したいところだ。そのような気持ちが表れているからこそ、日本人はいつまで経っても日本三大○○が大好きなのだろうし、これからも見たことのないジャンルで日本三大○○が誕生するのではないかと期待している。

文=いのうえゆきひろ