年末年始、電車内で騒ぐ子どもを上手に叱るには? 子どもの未来のための「後悔しない子育て法」

出産・子育て

公開日:2019/11/29

『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと(こころライブラリー)』(信田さよ子/講談社)

「子育て情報」は親がもっとも関心を寄せる情報のひとつだ。関連書籍は多数出版され、テレビでもインターネットでも子育て論が毎日のように紹介されている。子育ては「迷路」にも形容され、その道が一本道であれば、迷うことはないはず。二股に分かれていれば、どちらかで迷う。道が幾重にも分かれれば、ゴールに辿り着くのはとても困難に思えてくる…。

 すでに起きたことについて「こうすればいいですよ」と対応方法を示してくれる育児書は多い。だが、おすすめする方法は本によって異なることも多く、親はどれが自分や子どもにとって正解なのか迷う。

 では、虐待や抑圧的な支配など不幸な事態を子ども時代に経験してきた当事者の話を元に、「これだけは大人にしてほしくなかった=これだけは子どもにしてはいけない」と、予防方法を示すことは可能だろうか? 子育ての迷路をゴールからスタートに向かって辿ってみるような考え方だ。実際に不幸な事態を子ども時代に経験した親を長年カウンセリングしてきた著者がまとめたのが、『後悔しない子育て 世代間連鎖を防ぐために必要なこと(こころライブラリー)』(信田さよ子/講談社)である。著者はこの方法を、「逆算の子育て論」と呼ぶ。述べられている子育て論は豊富な実体験から練られているため、どれも説得力がある。

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 本書は、親なら誰でも悩みそうな話題である「叱り方」から、深刻な問題に関わる「虐待」まで幅広く取り上げている。本稿では、多くの親が高い関心をもっているであろう「叱り方」について紹介したい。

■新幹線や飛行機で騒ぐ子ども…適切な「叱り方」は?

 年末になると、電車や新幹線、飛行機などで帰省したり旅行に出かける家族が増える。この時に大人を悩ませるのが、車内・機内で騒ぐ子どもだ。特に、小さな子どもは静かにと言って聞かせるのが難しい。本書によると、こういったシーンでよく見られる親の対応は、次の5つに分けられる。

(1)子どもを放りっぱなしにして、自分はスマホをいじるのに余念がない。
(2)「うるさい!」と怒鳴ったり、子どもの頭を叩いたりする。
(3)「シーッ」と唇の前に指を立てて子どもを黙らせようとする。
(4)とりあえず「シーッ」と言った後で、「ねえ、お願いだから静かにしてて」「静かにしてください」と言う。
(5)まわりの人を眺めながら、「ほらほら、みんなに迷惑でしょ。まわりの人たちに叱られちゃうよ」と言う。

 こんなシーンで、あなたがとる対応はこの中にあるだろうか? 著書によると、どれもあまり望ましい例ではない。それぞれの対応についての詳しい解説は本書に譲るが、どの対応をしても子どもは静かにしないという。著者は、子どもを静かにさせるためには、小さめの絵本、お菓子など子どもが楽しめるものを用意しておくことが肝心だ、と述べる。ヨーロッパで乗り物の中が静かなのは、親が「子どもは騒ぐもの」という共通認識を持っており、ものやお菓子を用意しているからだという。

 さて、上の(1)〜(5)の中で、特に重大な問題をはらんでいるのが、(4)と(5)だという。日本では褒める子育て、叱らない子育てが一定の理解を得ているが、この方法だけで子どもの問題を解決するのは、どうやら難しそうだ。

 まず、(4)のように子どもに“お願いする” 親。本書によると、親は子どもと対等ではない。虐待を恐れてのこと、子どもに嫌われるのを避けるためのことであっても、“お願いする”言動は親の責任逃れ。責任逃れの姿勢が、子育て全般に表れないように留意したい。

 また、(5)のように人のせいにする親も同様で、責任逃れの姿勢が見てとれる。もしかしたら、こういった叱り方を続けていると、親がいざという時になって子どもを静かにさせようとしても、聞き入れられないかもしれない。

■子どもの未来から「今」にさかのぼって、最善の育て方を

 本書の大きなテーマのひとつは、育児における「マイナスな世代間連鎖を防ぐこと」だ。育児書のセレクトで迷っているという方は、迷路を子どもの未来からさかのぼって辿る「逆算」のアプローチに触れてみてはどうだろうか。

文=ルートつつみ