イチローだけじゃない。上原浩治が「もっと評価されるべき」理由

スポーツ

2019/12/26

『不屈の心』(上原浩治/ポプラ社)

 今年も、不世出のプロ野球選手が、また一人引退した。44歳の球界最年長としてジャイアンツでの活躍が期待された上原浩治だ。長いキャリアを裏づける、徹底した体調管理で大きなケガもなかったが、昨年43歳にして、人生初の手術に至ると復活はならず。涙しながらも、「若手の機会を奪いたくない」と潔く身を引いた。

「どこにでもいる野球少年」から「日本人初のワールドシリーズ胴上げ投手」として名を遺した。いわく、同世代のサラリーマンから応援されることが多いという。成功の源は、1999年に流行語大賞にもなった「雑草魂」。今年の大賞はラグビーの「ONE TEAM」だが、対照的に個人の心意気の逞しさがぐっと胸に刺さる。

 果たして上原は、どうやって困難を乗り越えていったのか、何を考えて日々を過ごしていたのか。幼い頃の苦労話から、ワールドシリーズ制覇、そして引退に至るまで、ありのままを記した新刊『不屈の心』(ポプラ社)が12月25日に出版された。

 大勢のファンの心を捉えるのは、彼がトップ選手に上り詰めながらも「雑草魂」を忘れないからだろう。たとえ失敗しようと挑戦しようとするひたむきさと行動力、違和感やわからないことに対して率直に意見する勇気、周りへの気遣いと感謝の気持ち。手の届かないスターのようで、身近な存在のままなのだ。

 成し遂げた記録は枚挙にいとまがない。なかでも、100勝100ホールド100セーブを達成したトリプル100は、今も議論を呼んでいる。これはメジャーでは史上2人目、日本人では上原が初という大記録だ。

 ちなみに、中継ぎ投手の“評価の低さ”を指摘し、世間の意識を高めたのも上原。一石を投じる「改革の人」でもある。だから、SNSも積極的に発信を続ける。時に心ない言葉を投げかけられるが、「10人の敵がいても1人のファンが待っていてくれるのなら」とめげない。

 恵まれない環境に置かれても、「エリートに負けるものか」と反骨心で努力を続けてきた。本書を読めば、鬱々としたものを抱える人は、勇気がもらえるだろう。上原自身こそ、もっと「評価されるべき」と思う。

文=松山ようこ