あのポール・マッカートニーが「寝る前に読み聞かせする本を書きたかった」と手がけた絵本が登場!

文芸・カルチャー

2019/12/16

『グランデュードのまほうのコンパス』(ポール・マッカートニー:著、キャスリン・ダースト:イラスト、いけもと なおみ:訳/潮出版社)

 2018年に来日し、東京ドーム、両国国技館、ナゴヤドームでオーディエンスを魅了したポール・マッカートニー。ベース、ギター、オルガン、ピアノと様々な楽器を演奏、しかも約2時間半ほぼステージに出ずっぱりで、ビートルズ時代からの名曲を40曲近くも歌うという、1942年生まれとは思えないほどの圧倒的なパフォーマンスだった。そして同じ年に発表した最新アルバム『エジプト・ステーション』はなんと36年ぶりに全米アルバムチャートで1位に輝くなど、創作意欲もまったく衰えることを知らない。

 そんなポールが2019年9月、ストーリーを担当した、初の絵本となる『Hey Grandude!』を海外でリリース、日本では『グランデュードのまほうのコンパス』というタイトルで、縦約30センチ×横約26センチの大型絵本として刊行された。絵を担当したのは多くのアーティストからポール自身が選んだ、カナダのイラストレーター、キャスリン・ダースト。彼女は数々のヒット映画を送り出している「ピクサー・アニメーション・スタジオ」でインターンを行い、アニメーターとして活躍した経験があるという。

 主人公は孫たちから「グランデュード」と呼ばれている、白いひげをたくわえたエドワード・マーシャル・シニアだ。ある週末、ルーシー、トム、エム、ボブの4人の孫たちは、グランデュードの家に遊びに来たものの、朝から雨模様で浮かない顔をしていた。そこへ孫たちを「チラース」と呼んで可愛がっているグランデュードがやって来て、ズボンの後ろのポケットから様々な風景が写ったポストカードを取り出す。そしてその中から一枚を選んで、上着のポケットからコンパスを取り出すと、針がぐるぐると回り始め……

「まわる はりを みててごらん、たのしい まほうの はじまりだ!」

 そう呪文を唱えると、グランデュードたちはポストカードの風景の場所に立っていた。そう、グランデュードは魔法が使えるのだ。憂鬱な朝から抜け出した5人は、さらなる冒険を楽しむ……という内容だ。グランデュードという言葉は、8人いる孫のひとりがポールのことを「グランデュード」と呼んだことがきっかけで生まれたもので、それに触発され、この物語を作り上げたのだという。

 ポールは本書刊行後にインスタグラムのフォロワーからの質問に答えており、グランデュードの年齢について「奇妙なことに僕と同じ77歳」としつつも、「もしかするとそれよりちょっと上かもしれないし、ちょっと下かもしれない。あなたの好きな年齢でいいんだよ!」と回答している。また「映画化したら、グランデュード役は誰がいい?」という質問には「ブラッド・ピット!」と即答、「ただ特殊メイクなどが必要だけどね。彼はとてもいいと思うんだけど、どう?」とおどけてみせている。

 ポールはこの話を書いた理由について、「世界中の祖父母のため、そして子どもたちのための、寝る前に読み聞かせする本を書きたかった」と語っている。絵本を妹に読み聞かせして思いついたアイデアが、ザ・ビートルズの名曲「Golden Slumbers」となったというポールだけに、本書も世界中の子どもたちに愛され、黄金の眠り―Golden Slumbers―を約束してくれることになるだろう。そして「さあ眠るんだ、愛しい人よ。泣かないで、僕が子守唄を歌うから」という「Golden Slumbers」の詞を知る大人たちにとっては、あなたが“グランデュード”たちに暖かく包まれ、守られていた日々を思い出すことになるのかもしれない。

文=成田全(ナリタタモツ)