歴代首相とマスコミの仰天な関係とホリエモンの意外な姿が描かれた衝撃の群像劇!

社会

更新日:2020/5/11

●歴代の首相とマスメディアの驚くべき関係とは?

 本書には、堀江氏の知られざる姿も登場する。

 インターネット黎明期の96年に産経新聞が立ち上げたウェブサイト『ZAKZAK』(現・夕刊フジ公式サイト)。97年にニッポン放送が企画したインターネット放送。このどちらもが堀江氏のエンジニア力で実現させたものだった。

 その後の2005年、堀江氏のライブドアはニッポン放送株の35%を持つ筆頭株主となり、当時はまだニッポン放送の子会社だったフジテレビの買収に王手をかける。

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 もしこの時、堀江氏の手にフジテレビが渡っていたら、その後、日本のテレビは果たして変わっていたのだろうか。本書を読んでいると、つい、そのことを思う。

 というのも本書には、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘といった歴代の首相たちが登場し、いかにメディアと関わってきたかの内幕も記されている。

 政治権力のトップにいる首相がメディアを操る姿は想像通りだとしても、逆バージョンもあることには驚かされる。

 本書には、朝日新聞のある社員が、首相になったばかりの中曽根氏の組閣に意見し採用されただけでなく、飲み会の場に電話一本で中曽根氏を呼びつけているシーンも登場する。他にも様々に描かれる、恩の売り買いで互いに忖度し合う政治家とメディアの姿は、あまりに公益性とかけ離れている。

「こうした姿は8、10チャンネルに限らず、程度の違いはあれほかのテレビ局にもあることだ」と記す著者。

 群像劇に紛れて影が薄くなりがちだが、著者の主眼が「政治権力と放送メディアが結託したいびつな日本社会」に置かれているのは間違いないだろう。

(メディアの公益性を)「真に望むことの愚かしさも知っているし、そうした状況を根底から糺(ただ)すのでもない、諦めが漂う半端な社会に生きている」という言葉で締めくくられる本書。

 さて、日本のメディアの今、そして未来に対して、あなたは本書から何を思うだろうか。

文=町田光