既婚・未婚にこだわる時代はもう終わり! 現代女性におくる「幸せの育み方」

恋愛・結婚

公開日:2019/12/27

『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(小林久乃/ベストセラーズ)

「実は離婚したんだよね」

 数カ月前、友人にそう報告した時、みんなの顔に浮かんだのは憐みだったように思う。「いい人と再婚して、また幸せになろう」や「誰かいい人紹介するよ」という友人の配慮をありがたく思う一方で、心がザワザワした。なぜ、「結婚=幸せ」のような方程式が前提なのだろう。私は独身に戻った今でも、こんなに幸せなのに。

 そんなザワついた心に「そうだよね」と寄り添ってくれた書籍があった。『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(小林久乃/ベストセラーズ)だ。

advertisement

 本書は、フリーライターや編集者など数多くの肩書きを持ちながら仕事と人生を謳歌する小林さんが、これまでの人生経験を踏まえ独自の視点で「女性の生き方」を考察したエッセイ本。

“著者である当の私はどうなのかというと、現在、婚活はしていません。かといって結婚を放棄したわけではないです。常に臨戦態勢ではいますけど、別に結婚してもしなくてもこの世は楽しく生きられることも見えてきた。”

 作中では独身女性の生き方を「起承転結」の4章に分け、凛としながら幸せに生きていくためのヒントを伝授。「起」では、なぜ私たちは結婚しようと思ったのかという、そもそも論を提示し、「承」では現代を生きる独身女性が結婚しない理由を紹介。「転」では小林さんが実際に行ってきた婚活体験談を伝え、独身でも楽しく生きていくための10の法則という「結」に辿りつく構成となっている。

結婚していてもしていなくても私たちは幸せになれる

 結婚適齢期にもなると、独身女性は身内からお節介を受け、続々と既婚者になっていく友人たちの晴れ姿を見送る機会が増えていく。すると、「結婚」は憧れの対象となり、幸せの代名詞のようにも思えてくる。だが、その一方で、結婚に踏み切れない気持ちがあるのも事実だ。本書はそんな独身者の複雑な胸中を肯定してくれる。

 例えば、母親になりたい気持ちはあるものの結婚には躊躇してしまう方に対し、小林さんは養子縁組や代理出産という選択肢を挙げつつ、こんなエールもおくっている。

“大丈夫、母親になろうとした時点であなたは、人を慈しむスペシャルな愛情を持ち合せている。その日までの独身の日々は、金のかかる体にいいものを食べて、筋トレでもして万全の体制を整えておこうじゃないか。”

 心に染みこむこの言葉からは、小林さんの優しい人柄も垣間見えるように思えた。

 筆者は結婚や離婚を経験し、自分なりに精一杯、幸せの形を模索してきたと自負している。だからこそ、本書の書籍名を目にした時、同じ考えの人がいる安心感で胸がいっぱいになった。

 現代では、遠距離婚や週末婚などマニュアル通りではない夫婦の形も増えてきた。しかし、「普通」の枠から少しでも外れた結論を下すと、世間の噂話のネタにされることも多い。バツイチも例外ではない。「結婚に失敗した」という事実はいつの間にか、私という人間を否定する材料になることも少なくないのだ。「人間性に問題があるから離婚になったのでは?」という言葉のナイフを何度突き付けられたことだろう。

 本書を通して、そんな心の傷に初めて気づくと同時に、小林さんの力強くてかっこいい人生観に助けられもした。

“大切なのはひとつだけ。今までも、そしてこれからも自分の生き方を責めないことだ。”

 夫のために手の込んだ料理を規則正しい時間に作っていた既婚者の私はたしかに幸せだった。けれど、時間を気にせず思う存分、原稿の中で泳ぎ切った後、カップ麺を貪れる自由な今も、私は変わらず幸せだ。その日の出来事を語り合いながら2人でテレビを楽しんでいた日々も愛おしかったが、人目を気にせずにヘドバンしながら好きなバンドのDVDを満喫できる今の暮らしも心底好きだと思う。私たちは結婚していてもしていなくても、幸せに包まれていられるのだ。

 離婚後、しばらくは幸せの形が分からなかった。そんな時、ある人が言ってくれた言葉が今も頭と心に残っている。

「楽しい瞬間を積み重ねていけば、気づいたら幸せになれているかもしれない」

 この言葉に限りなく近い優しさが、本書にはあった。またいつの日か“幸せ迷子”になった時の処方本にもしたい。

文=古川諭香