あなたはただの「知的バカ」になっていないか? 2020年リスクを背負って生きる“攻め”のすすめ

ビジネス

2020/1/16

『身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』(ナシーム・ニコラス・タレブ:著、望月衛:監訳、千葉敏生:訳/ダイヤモンド社)

 2020年はちょっとでも攻めた生き方をしたい――そう思っている人にオススメなのが『身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』(ナシーム・ニコラス・タレブ:著、望月衛:監訳、千葉敏生:訳/ダイヤモンド社)。想定外の出来事にどう向き合うべきかを考察した『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質』や、不確実性の有用性を論じた『反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』など、世界中でベストセラーとなった作品に続く著者の最新作は「リスクの価値」がテーマです。

“いちばん説得力のある発言とは、本人が何かを失うリスクのある発言、最大限に身銭を切っている発言である。対して、いちばん説得力に欠ける発言とは、本人が目に見える貢献をすることもなく、明らかに(とはいえ無自覚に)自分の地位を高めようとしている発言である(たとえば、実質的に何も言っておらず、リスクも冒していない大部分の学術論文はその典型例)。”

 本書原題は『Skin in the Game——Hidden Asymmetries in Daily Life』。メインタイトルは、「なんらかの目標達成のために自腹を切りリスクを負うこと」。書中では「他人の歯では噛めない」というユダヤのことわざに喩えられていますが、まさに、邦題の「身銭を切る」、あるいは「やるかやらないかは自分次第」と言い換えることができるでしょう。

 サブタイトルは「日常生活における、隠された非対称性」。「何が正しいかよりも、何が間違っているかのほうが理解しやすい」「得る喜びよりも、失う痛さのほうが大きい」といった著者のいう“非対称”の例が紹介されています。つまりタイトルに集約されている著者の信条は、何が正しいか分からなくても、あるいは失う痛みを多く味わおうとも、リスクを冒すことを恐れずにたゆまず進み続けるべきだということです。

 400ページ超にわたる本書の内容はときに難解で哲学的ではありますが、ユーモラスな文体や、鋭い洞察をまじえた豊富な具体例のおかげで、名言集のようにサクサクと読み進めることができます。

 本書では、身銭を切っていない人物を「知的バカ」と皮肉を込めて表現しています。まともな仕事に就いているし、影響力もある…でも、自分の知識・教養に対して疑問を持つことがなく、自分は世間に貢献していると思い込んでいて、自分を理解することができない人々をバカ・無教養扱いする。そういう人物は「見えるもの」ばかりを見て、「見えないもの」に価値を置かない。前著でブラック・スワン理論(ありえないと思われていたことが起こると壊滅的被害をもたらす事象)を論じた著者は、こうした傾向を警戒し、物事の行間を読む重要性についてくり返し訴えかけます。

“要は、データにないものを考慮することが重要なのだ。記録のなかにブラック・スワンが存在しないからといって、そこにブラック・スワン自体が存在しなかったことにはならない。その記録が不十分なのであり、そうした非対称性を恒久的に分析のなかに含めるべきだ。背景ではきっと、物言わぬ証拠が原動力になっている。”

 これまでにない攻めた生き方をしようと思うならば、「ありえそうなこと」よりも「ありえないこと」、「わかっていること」よりも「今まだわからないこと」が役立つことも多いはず。反対意見があっても事業をおし進め、判断が難しい選択や局面にも責任をもってGOサインを出せるようになるために、リスクを愛する姿勢を本書で身につけてみてはいかがでしょうか。

文=神保慶政