桃太郎、笠地蔵…誰もが知る昔話の裏には「大人のヒミツ」が隠されていた!?

文芸・カルチャー

2020/2/5

『図説 裏を知るとよくわかる! 日本の昔話』(徳田和夫:監修/青春出版社)

 桃太郎や浦島太郎、猿蟹合戦などは、誰もが一度は読んだことがある有名な昔話。しかし、その話の裏には驚愕の事実がたくさん秘められていることはあまり知られていない。『図説 裏を知るとよくわかる! 日本の昔話』(徳田和夫:監修/青春出版社)は、誰もが知っている物語の見方を変えてくれる1冊だ。
 
 昔話は子どもの読み物というイメージが強いかもしれない。だが、そこには国やある地域において何世代にもわたって暮らしてきた人々の心情や民族文化が反映されている。昔話をひもとくと、歴史が分かるのだ。
 
「めでたしめでたし」で締めくくられるショートストーリー。その中には一体どんな真実が隠されているだろうか。

■桃太郎にはモデルが実在した!?

 昔話と聞いて真っ先に思い浮かぶ「桃太郎」は、昔話の中でもとりわけメジャーなもの。川から流れてきた桃から男の子が生まれ、お供を連れて鬼を退治するというシンプルなヒーローストーリーが子どもにもウケる。


 そんな桃太郎に、実は原型とされる伝承があるという。それは吉備国(現在の岡山県)に伝わる「温羅(うら)伝説」。諸説あるが、本書が紹介するのは吉備津神社の由縁。

 時は今から2000年以上前。朝廷は、里に出ては船や婦女子を襲う温羅を退治しようと悪戦苦闘していた。そんな時、温羅の討伐を任されたのが吉備津彦命(きびつひこのみこと)。彼は温羅の居城・鬼ノ城に矢を放ち、勇敢に戦う。すると、1本の矢が温羅の目に命中する。温羅は雉や鯉に化けて逃げ、吉備津彦命は鷹や鵜になり追いかけ、遂に温羅の首を切り落とすことができた。

 しかし、切り落とした温羅の首が何年も唸り続けたため、吉備津彦命は吉備津神社の釜殿の釜の下を掘り、首を埋めた。それでも、温羅の首は13年間唸り続けたという。

 この物語で活躍した吉備津彦命こそ、桃太郎のモデル。吉備津彦命は討伐の際に3人の家来を従えており、彼らが桃太郎に登場するお供の原型になったとされている。また、本書によれば、温羅の首が唸り続けていたのは吉備津神社に古くから伝わる鳴釜の神事が関係しているのだという。

 さらにおもしろいのは、ここからだ。温羅は鬼のモデルだといわれていたが、近年ではその説を否定する声も上がっている。ではなぜ、温羅は悪者にされてしまったのか? 本書はその背景に“朝廷の思惑”があったのではないかと指摘する。桃太郎の本当の被害者はもしかしたら、“鬼として描かれた”温羅だったのかもしれない。

 昔話の裏に潜むまさかの企みを知ると、昔話は一気に大人の読み物になるのだ。

■「笠地蔵」はなぜ6体だった?

 笠地蔵は、貧しくても心優しいおじいさんとおばあさんに幸運がもたらされる、温かい昔話。物語の中に描かれている地蔵の数は地域によってまちまちだが、6体であることが多いのには深い理由があるという。

 その6という数字は、すべての生命は地獄道、餓鬼道、修羅道、畜生道、人道、天道の6種の世界に生まれ変わりをくり返すという「六道信仰」を表している。なんと、昔話の中に輪廻転生の教えが盛り込まれていたのだ。

 また、物語の中で大晦日の深夜に地蔵が訪ねてくることにも大きな意味がある。その時間帯は昔の暦だと、正月の元日。当時の人々は元旦に祖霊が春の神さまとなって到来すると考えていたため、笠地蔵にもその思想が反映されている。こうした奥深さを知ると、慣れ親しんだ昔話をもう一度味わいたくなるはずだ。

 昔話はいい伝えられた地域によって展開や結末に違いがみられることも多い、ユニークな物語だ。本書ではそうした違いについても説明があるので、おなじみの昔話を新たな視点で楽しむことができるだろう。今まで知らなかった“新しい昔話”のヒミツは、あなたにどんな教訓を与えてくれるだろうか。

文=古川諭香