娘の犯罪被害は父親の「うっかりSNS」のせい? 「スマホで撮っただけなのに」と後悔しないために

暮らし

2020/2/11

『あなたのスマホがとにかく危ない』(佐々木成三/祥伝社)

 ここで紹介するのは実際に起きたストーカー事件だ。誰にでも起こりうる恐ろしい実例をご紹介したい。

■娘の個人情報がネットに流出。発端はまさか父親の自分…

 ある父親がスマホで写真を1枚撮った。難関高校の試験を突破した娘が入学式を迎えたので、その朝の様子を記念撮影したのだ。よくある幸せな光景だったが、父親はうっかり“間違い”を犯す。その写真をFacebookに投稿してしまったのだ。

▲本書22ページより

 それから2週間後、父親は友人から連絡をもらう。
「娘さんの写真がネットに流出して個人情報が晒されている」
驚いて確認すると、有名な掲示板で例の写真が流出している。Facebookの投稿の公開範囲を友達限定で設定していたのだが、承認した友達が多すぎたことが原因だった。

 掲示板の書き込みには、「この制服は○○高校」「後ろに見えるのは○○団地、撮った場所は○○公園だな」「ということは○○駅が最寄りで、使っているのは○○沿線か」という具合に、ネット住人たちが互いに情報を出し合って特定していた。さらには「可愛い。付き合いたい」など、目を覆いたくなるような書き込みもあり、父親は怒るどころか恐怖で血の気が引いた。

■娘の誕生日にストーカーからプレゼントが届いた

 父親が知り合いの弁護士に掲示板の書き込みの削除を依頼した頃、娘のTwitterに1件のリプライがきた。「風邪をひいた。頭痛い」というツイートに、ある男のアカウントから「お大事に」というコメントがついたのだ。娘は「ありがとう」と返した。

 この返信がいけなかった。さらに後日「今度一緒に映画に行こうよ」というDMがきた。無視したら、「○○駅前のカフェのケーキおいしい?」「今朝、電車で居眠りする姿かわいかったよ」と、後をつけられているのがわかった。怖くなって「やめてください」と返信したら、駅や通学路で隠し撮りした写真が送られてくるようになった。男のアカウントをブロックしたら、娘の誕生日にスマホケースが自宅ポストに届けられた。それは以前「あれ、いいな」とツイートしたものだった。

 娘から深刻な状況を打ち明けられて、父親は警察に被害届を提出。幸いにも捜査開始からまもなく27歳フリーターの男が犯人だと判明した。

 男の手口はこうだ。掲示板の情報から、男は最寄り駅と学校で待ち伏せし、娘を見つけて尾行。下校中の娘と友達の会話から、娘の名前と部活動を盗み聞きした。それをもとにハッシュタグ検索を行い、同じ部活にいる友達のアカウントを見つける。そして友達のアカウントのフォロワーのページにひとつずつ飛んで絞り込むことで、娘のアカウントを特定したという。

■いま私たちが無事なのは“まぐれ”にすぎない

『あなたのスマホがとにかく危ない』(佐々木成三/祥伝社)では、危険意識なく不用意にスマホやSNSを活用することで、犯罪被害に巻き込まれるリスクを訴える。

 前述のストーカー被害も本書で紹介されている事例。この被害の恐ろしいところは、誰にでも起こりうる可能性があることだ。父親が娘の写真をFacebookに投稿したことも、娘がSNSで見知らぬ男にコメントを返したことも、軽率だったが、「どうしてそんなことをしたんだ!」と責めるほどではない。スマホやネットが発達した現代では、こうした被害が誰にでも起きてしまうのだ。

 このほか本書では、「スマホゲームをきっかけに監禁された小学生」「SNSで旅行に行く投稿をして空き巣被害に遭った」「スマホ紛失で始まった恐喝」など、恐ろしい事例が紹介されている。

 一番のポイントは、彼らは自ら危険に飛び込んだのではなく、一般的なスマホやSNSの使い方をして被害に遭ったこと。著者であり、デジタル捜査班の班長という経歴をもつ元埼玉県警捜査一課の佐々木成三氏は、本書でこう警告する。

はっきり言って、いま
あなたが無事なのは、
“まぐれ”なんです。

■どうすればデジタル犯罪は防げるのか?

「デジタルタトゥー」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 私たちが利用するSNSには、フォロワーに向けた写真や動画が投稿されている。スクリーンショットを使えば、文字だけの投稿も画像になる。

 悪意を持つ人間がこれらを保存し、ネットで拡散すれば、永遠にネットを漂い続ける消せない刺青=デジタルタトゥーとなる。これは立派な社会問題であり、小説やドラマ、映画でも描かれて話題になった。

 私たちはこれらの問題に対してどのような対策を打てばいいだろうか? 本書では100ページ以上にわたって、デジタル犯罪被害に遭わないための対処法を提案する。

 今やスマホは個人情報のかたまりだ。写真や動画だけでなく、連絡先、SNSのトーク履歴、そこからわかる会社や学校の情報、キャッシュレス決済の普及によるクレジットカード情報など、挙げればキリがない。絶対に晒せないような情報が詰め込まれている。

 そんな個人情報のかたまりを、私たちはうっかり紛失してしまう。警察庁の統計によると、東京都だけでも年に約10万台のスマホが失くなっている。その一部はデータを抜き取られて犯罪に使われた可能性があるという。

 最も基本的な対処法は、画面ロックをかけることだ。数字のパスワードでセキュリティを解除する「PINコード」を設定するのだ。ただし安易な数字のパスワードは突破されやすいので、パスワード管理アプリを利用して強固なセキュリティを設定したい。

 ちなみにパターン認証はPINコードに比べてセキュリティの強度が弱く、突破される可能性が高いという。指紋認証や顔認証は強固なセキュリティだが、指紋認証は持ち主が寝ている隙を突けば突破できるし、顔認証も一部のスマホで「寝顔で解除できた」と問題になった。何事も過信は禁物だ。

 さらに本書は「SNSを安全に使うための設定」もアドバイスする。SNSを利用する上で最も気をつけたい脅威は2つ。「個人情報の流出」と「アカウントの乗っ取り」だ。本書では4大SNSであるLINE、Twitter、Facebook、Instagramにおける対処法を解説している。

 スマホは私たちの生活を圧倒的に便利にしたが、どんなものにも必ず代償がついてくる。今やインフラ同然だからこそ、失えばそれだけの代償を払わなければならない。

 本書は誰でもデジタル被害に遭う可能性を指摘し、それを未然に防ぐ方法を提案する。「子どもは何歳からスマホを持たせるべき?」と悩む親御さんも多いだろうから、子どものために本書を読んでも損はないだろう。“スマホを持つだけで生まれる危険”を、痛いほど理解しておきたい。

文=いのうえゆきひろ