星になりたいと言った女子高生と、彼女を最期まで撮り続けた男子高校生…人生で最も輝いた2ヵ月間を描く究極の純愛ストーリー

文芸・カルチャー

公開日:2020/2/17

※「ライトに文芸はじめませんか? 2020年 レビューキャンペーン」対象作品

『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』(冬野夜空/スターツ出版)

 一瞬の光に狙いを定めてシャッターを切る。カメラは被写体が輝く瞬間を切り取り、その時を永遠のものにしてくれるものだ。ファインダー越しに、あなたは何が見えるだろうか。大切な人の笑顔や切なげな表情、この世界が決して失ってはならないものをずっと撮り残しておいてくれる。

 あなたが失いたくない時間とはどのようなものだろうか。忘れたくない思い出とは何だろうか。『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』(冬野夜空/スターツ出版)は、今を全力で生きる女子高校生と、そんな彼女の写真を撮り続ける男子高校生の純愛ストーリー。この本は青春の瑞々しさで溢れている。ただのクラスメイトがいつの間にかかけがえのない人になる。2人のピュアなやりとりがなんと甘酸っぱく歯がゆいことだろう。

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 主人公はクラスでは目立たない存在の男子高校生・天野輝彦。写真を撮るのが趣味の彼は、雨が降る花火大会の日、ビニール傘をさした浴衣姿の女の子を見つける。切なげに花火を見上げるその美しい姿に、思わずカメラを構えると、それはクラスの人気者・綾部香織だった。翌日の放課後、屋上へ呼び出された輝彦は、香織から「私の写真を撮って」とお願いされる。ポートレート写真の練習になるからと、輝彦は快諾。だが、その日から、輝彦は、毎日のように自由奔放な香織に振り回されることになってしまった。

 天文部の香織は、星が大好きな女子高生。「私も星になれればいいんだけどね」と口にしながら、香織は、自分の星は「ベガ」なのだと言う。なんでも月ごとに決まっている誕生石と同じように、365日全部に誕生星というものがあり、彼女の誕生星は織姫の星でもある「ベガ」なのだそうだ。確かに彼女は、一等星の「ベガ」のようにいつもキラキラと輝いている女の子だ。彼女の見せる表情はほとんどが笑顔。だからこそ、不意にのぞかせるほかの表情が印象に残る。星を語る時の表情の端々に現れる切なげな瞳。拗ねた時に膨らむ頬、そんな風にコロコロと表情が様変わりする彼女のことを、輝彦は次第に気になり始める。

 しかし、ある日、輝彦は、香織が明るい笑顔の裏で、重い病と闘っていることを知ってしまうのだ。

「僕は、君を撮るよ。どんなに人気なモデルよりも、どんなに綺麗な女優よりも、誰よりも君は輝ける。僕は、そんな君を撮りたいんだ」

 輝彦は、自分にしかできないことがあることに気づく。だから、決して泣かない。苦しくて、切なくて、でも人生で一番輝いていた2カ月間。輝彦は香織をずっと撮り続けることを決意するのだ。

 星のように輝きたいと願う女子高生と、自分が輝くことなどないと思っている男子高校生。正反対の2人が織りなす究極の純愛ストーリーを是非ともあなたも手にとってほしい。2人を待ち受ける残酷な運命…。この本を読めば、あなたも、いつの間にか、ほろりと涙を流してしまう自分に気づかされるだろう。

文=アサトーミナミ

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