世界で初めてブラックホールの撮影に成功した国立天文台教授が、宇宙の謎をユーモラスに解説!!

文芸・カルチャー

公開日:2020/4/11

『国立天文台教授が教える ブラックホールってすごいやつ』(本間希樹/扶桑社)

 平成最後の年でもあった昨年、「世界で初めてブラックホールの撮影に成功」というニュースが盛り上がったのを覚えている人はいるだろうか。そのプロジェクトにおいて日本のリーダーを務めた本間希樹先生が、『国立天文台教授が教える ブラックホールってすごいやつ』(本間希樹/扶桑社)を上梓したと知り、入手してみた。ブラックホールのみならず宇宙の謎を教えてくれる本書では、表紙や本文のイラストをシュールな漫画に定評のある吉田戦車氏が手掛けていて、「え、なんかすごく難しそう?」と尻込みしそうなテーマなのに、ゆる~い雰囲気を醸し出している。

奇跡すぎる宇宙の話

 宇宙の始まりは今から約138億年前。超高性能な顕微鏡でも見えないくらいの、直径が「10のマイナス34乗」という超微小の宇宙の「種」のようなものが爆発して誕生した。その爆発を「ビッグバン」と呼ぶのはよく知られているけれど、発表当初は科学者の多くが「は? 何を言っているんだ?」と否定的な見解を示し、なかでもイギリスの天文学者フレッド・ホイルはラジオ番組に出演した際に「宇宙は、ビッグバン(大きなバーンという爆発音)から始まったという説があるけど、あり得ないね」とからかったそうだ。ところが、そんな皮肉なネーミングをビッグバン説を主張する研究者たちが気に入って使うようになり、後年に裏づけとなる証拠が見つかった際には正式な名前として定着した。

偶然すぎる地球の話

 宇宙の誕生さえ奇跡みたいなものなのに、現在の地球が人間にとって生存するのに都合良くできているのは、さらにいくつもの偶然の積み重なりによるものだとか。地球の一日は約24時間で、それを決めているのは自転の周期。これを他の惑星と較べてみると、太陽系で一番大きな木星の自転は1周10時間だし、隣の金星は1周が243日なうえ、自転の方向は地球を含めた他の惑星と反対だ。さらに、地球の自転軸は太陽の周りを公転している面に対して23.4度傾いており、そのおかげで「季節」が生まれている。また、重力が弱ければ酸素などを地球に保っておくことはできず、暑すぎたり寒すぎたりしても人間は生きていけないわけで、その大きな要因となる太陽と絶妙な位置にあるのも偶然のたまもの。木星や土星のような地面の無いガス惑星だったら生命は生まれなかっただろうと述べる本間先生の解説には、吉田氏が「ありがち」な風船型宇宙人を描いていて、思わずニヤニヤしてしまった。

advertisement

あり得ないブラックホールの話

 ところが、いよいよ本題ともなるブラックホールの章に入ると、なんだか本間先生の解説の雰囲気が変わる。その名前から「穴」だと誤解されがちなブラックホールは、「丸い形をした、れっきとした天体」だそうで、とんでもなく強い重力によってどんな物でも吸い込む。そこで本間先生は、ダイエットしたい人や背が高くなりたい人はブラックホールに「ぜひ縦向きに、足のほうから落ちてみてください」と読者に勧める。

 重力によって足のほうが強く引っ張られ、体が細長く伸びスレンダーなモデル体型になれるのだとか。ただしそれは一時的なことで、最終的には「スパゲッティ現象」と呼ばれる全身が引き伸ばされた状態になり、体は引き裂かれてバラバラの運命に。それが嫌な人には、「一応オススメしたいのが筋トレです」というシュールな回答をしており、そ…そんな! と思うものの、これぐらい柔軟な発想のほうが宇宙は楽しいのかもしれない。

ロマンがありすぎる宇宙人の話

 この章になると、本間先生も吉田氏もノリノリである。宇宙やブラックホールも、まだまだ謎だらけで宇宙人の存在は証明さえされていないものの、ほとんどの天文学者は「宇宙人はいる」と真面目に考えているという。だからもし宇宙人に会ったら、どんな話をすればよいのかも本間先生は教えてくれて、それは「数学」と「物理学」に「音楽」らしい。

 というのも、物理の法則は宇宙共通で、それを理解するための基本は数学なのと、リズムや音階といった音楽には数学的な裏づけがあるからだそうだ。宇宙人との合コンに備えて、さらに話題を広げたければ、宇宙に関する「あるあるネタ」や「雑学」を本書で仕込んでおくと打ち解けやすくなるかもしれない。

文=清水銀嶺

この記事で紹介した書籍ほか